第五百六十二話 経済効果〜妄想五輪−6 [妄想譚]
二千十二年のロンドンオリンピックが終わった。その経済効果は二億六百八
十億だという。商機を見つけることに関しては抜け目のない欲野大造は、二億
という数字を聞くやすぐに思った。じゃぁ、次の商機がみえているではないか。
四年後のオリンピックはブラジルだという。ならばと、閉会式をテレビで見た
翌日、大造はすぐに旅行代理店に赴いて、リオデジャネイロのホテルを予約し
ようとした。だが、残念ながらお客様。代理店受付嬢がいうには、一ヶ月先の
宿しか予約できないという。四年先の部屋を予約するためには、一ヶ月後から
ずーっと四年間ホテルをキープし続ける必要があるという。こりゃいかんな。
そんなことしてたら破産してしまう。
大造はホテルの客室千部屋を確保することをあきらめた。ならばと考える。
ブラジル国旗だ。あのデザインの品物をつくろう。緑地に黄色い菱形、その中
に丸い宇宙。かっこいいじゃないか。今回も英国国旗がデザインされた者が沢
山出回っていた。Tシャツ、ジャンバー、マグカップ、プレート、キャップ、下
着のパンツ、サンダル・・・・・・いまからたくさんつくって四年後に向けて販売すれ
ばいい。そうだ、これはいい商売だ。大造はさっそくデザインを発注し、国旗を
すり込むアイテムを手配した。
オリンピックは四年毎だ。四年という年月は、選手たちにとっても長い時間だ
が、これをビジネスにしようという者にとっても長い。大造は忘れていた。四年
前にもまったく同じことを考えて、英国国旗デザインの品々を大量に発注したこ
とを。大造が借りている倉庫には、英国国旗デザインのアイテムが山のように売
れ残っていることを。
了