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第五百五十四話 オリンピック疲れ〜妄想五輪−1 [妄想譚]

「おい、君。三日も会社を休んでどうしたのかね。それに今日だって、久々に

出てきたと思ったら、眠そうな顔をして。夏バテじゃないだろうな」

「あ、課長、すみません。勝手いたしまして。実は、言わなかったんですけど、

オリンピックで」

「なに? オリンピック? 毎晩遅くまでテレビを見てて、オリンピック疲れで

勝手に会社を休んだりしてたというのかね?」

「あ、いえ、会社には一応休暇届けを出してますけど……それに、テレビじゃ

なくって、ロンドンに」

「なに! 君は、私に黙ってロンドンに行ってたというのかね?」

「はぁ、すみません。結果が出せたら、ご報告しようかと」

「なんだ。どういうことだ。結果が出せたらって。何を応援してたんだ。どの競技

の結果を報告するつもりだったんだ」

「いえ、その。応援とかじゃ……」

「サッカーかね? 頑張ってたじゃないか。男女ともに。そんなもの、君の報告を

またなくても、俺だってちゃんとライブで見て」

「いえ、サッカーじゃないっす。そんなメジャーな……」

「じゃぁ、体操か? あれも後半がんばったしな」

「いえ、その、もっと地味な……」

「地味な? ……柔道かな。柔道だって地味じゃないか。あれも頑張ったしな、

特に女子が」

「ま、近いといえば……近いような」

「シンクロは派手だし、ああ、そうか、ハンマーか。ハンマー投げだな? い

や、アーチェリーも頑張ったぞ。レスリング? いや、ボクシングか? そうか、

重量挙げ? バドミントン? なんでもいいけど、俺は全部もう結果を知ってる

ぞ、君の報告なんて受けなくても」

「そ、そうですか。まぁ、負けちゃったし。だから報告もできないし」

「なんだ、気になるなぁ。何を応援してきたんだよ。言えよ」

「あの、課長。応援疲れじゃないっす」

「応援疲れじゃない?じゃぁ、何なんだ」

「出てたんっす。オリンピックに」

「まぁた。君がそんな競技をしてるなんて聞いたことないぞ」

「でも、そうなんっす。勝てたら言おうと思ってたんっすけど。負けたから……」

「なんだ、負けたのか。残念だったな。オリンピックに出てたんなら、さぞか

しお疲れだろうな。じゃぁ、今日はもう帰って休め!」

「あ、ありがとうございま」

「……なんてことは言わんぞ。それとこれとは別だ! 三日も休みやがって。

ちゃんと働け! 負けたんならなおさらだ。お国のためにもっと働け!」

「な、なんですか、それ。もうお国のために死闘してきたのに」

「でも、負けたんだろ? ざーんねーん!」

「ひ、ひどい。ぼくなりに頑張ったのに」

「メダルを持って帰らないとな」

「そ、そんな。メダル取れなかった選手の方が多いのに」

「じゃぁ、何か? 参加することに意義があると言いたいのか?」

「そ、そうじゃないんですか?」

「で、君はなんの種目に出てたんだ?」

「いえ、その」

「言えよ」

「ま、その」

「言えよ」

「うーん」

「言ったら許してやるぞ。言え。言いなさい。言い給え。言ってくれ。言って

たもれ」

「・・・・・・サ、 サム・・・・・・レスリング」

「サム・レスリング? なんじゃそれ」

「つまり・・・・・・」

「つまり?」

「…………ゆび……相撲……」

「指相撲?」

「指相撲」

「そうか、それは大変だったな、じゃぁ今日は帰ってゆっくり……おい、そんな

競技、オリンピックにあったか?」

「……」

                                  了

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