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第七百二十七話 ベッド [萬金譚]

 底冷え。密閉されたマンションで隙間風もない部屋であっても、この寒さの
では夜になるとどんどん冷えてくる。起きている間は暖房であったまってい
るが、眠る時にはすべてを消してベッドにもぐりこむ。羽毛布団をつかった
ベッドの中は、すぐにあたたまる。
 ところでうちにはペットがいる。暖房がついているうちはいちばん暖かいと
ころをよく知っていて、クッションの上、テレビの前、ソファの上などでそ
れぞれくつろいでいる。暖房が切れてからもしばらくは暖かいところで眠っ
ているのだが。
 犬の訓練士に言わせると、飼い犬はソファやベッドの中にいれてはいけない
という。人間の居場所とはくっきりと分けないと、力の順位がわからなくな
ってよくないというのだ。だげどうちではその両方を許してしまっている。
 私たちがベッドに入ってしばらくすると、まずは犬が寝室にやってきてベ
ッドの上に飛び上がる。枕元で布団の中にはなさきを突っ込むので、私は
布団を持ち上げて中に入れてやる。少しすると、今度は猫がやってきて、
枕元でにゃあというのでこれもまた布団を持ち上げて中に入れてやる。う
ちの犬と猫は親子のように仲良しで、私たちは夫婦、犬、猫、みんな一緒
にぬくぬくと眠るのだが。
 問題はここからだ。やつらはしばらくすると、暑くなるのかトイレに行く
のか、ベッドから出ていくのだ。まずは猫が出ると犬が追いかける。しか
しまた少しすると、今度は猫がにゃあと中に入れろといい、犬がその後ろ
に並ぶ。夜中に何度かこれが繰り返される。やつらはぱっと起きてぱっと
眠れる習性だろうからそれでいいが、人間はそうもいかない。寝不足。
 さらにしばらくすると、それまで部屋の隅っこで眠っていたうさぎが起き
てきて、犬の後ろに並ぶ。またしばらくすると、廊下の先で眠っていた狐
が、うさぎの後ろに続く。さらにベランダにいた鶏が。次には虎が、猿が、
キリンが、象が、次々と寒さに目を覚まして布団の中にもぐりこんでくる
のだ。これはもうたまらない。そろそろベッドを大きなものに買い替えな
ければならない時期なのかもしれない。
                           了

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ブログタイトルを変えてみた。 [萬金譚]

眉村卓氏にインスパイアされて、毎日1本の物語に挑戦することで始めたこの短編小説ブログ。

今回で150話を記念して、ブログタイトルを変えてみました。

新しいタイトルは、毎日一話、アラビアンナイトにちなんで千一話物語。

眉村卓氏の1778話を目標にとしていましたが、

さらに明確な千一話という切りのいい数字を新たな目標に、

世にも不思議な話、切ない話、愛しい話、面白い話なんかを毎日アップしていくつもり。

もちろん、大好きなSFやホラーもありで、オールジャンルで書いていきます。

これからもよろしくご愛読お願いします!乞うご期待!

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