SSブログ

第五百五十五話 五五五は……の番号 [妖精譚]

 ゴーゴゴー。

 表通を大型トラックが走ると、開けっ放しのベランダの窓から大きな騒音が

聞こえてきて喧しい。エアコンをつけて窓を締め切れば、外の音はほとんど

聞こえなくなるのだが、節電が叫ばれている昨今でもあり、また、エアコンの

冷気よりも自然の風を望ましく思うような性分も手伝って、敢えて窓は締め

切らないでいるのだ。

 窓を開け放っておくと、もちろん網戸は閉めておくのだが、騒音以外に、

外気がそよ風に乗って入ってくるのが心地いい。そよ風にはベランダに並

べた草木の匂いも含まれており、元来、人間というものはこういう生活をす

きなのだと思わざるを得ない。

 午後、碁石を並べて暇をつぶしていると、天上から東の方へと傾きはじめた

太陽の光が向いのビルのガラス窓に反射して、その照り返しがこの部屋に影

を落とす。どこかに反射したときなのか、あるいは光が何かを通過するときに

拾うものなのかわからないが、この部屋にっ入ってきた光が壁に奇妙な形を

投影する瞬間があった。いくつかの短い直線で構成された記号のようなもの。

 なんだ? これは。首を右に左に傾けてその影を見つめていると、次第に

何かくっきりとした文字のように見えてきた。

「五五五」

 どうやらそう見えた。五五五。なんだ、これは。偶然そういう形になった何か

の影なのか、それとも、意味のあるサインなのか。

 666なら、これは映画「オーメン」を見た人なら誰でも知っている、獣の番号

といわれるものだ。666という連続した数字が何をあらわすのだか知らないが、

悪魔の存在を意味するもので、悪魔にとりつかれた人間の身体のどこかに刻

印されているというのだ。もし、壁に投影されているものが666とか六六六と

読めるなら、相当に気持ち悪いものだが、どうみても五五五である。666とは

違うといえども、獣の番号より111少ない数字のゾロ目は、そう考えるとこれ

だって気持ち悪い。いったいなんなのだ。悪魔寄りも少し格下の何かを表す

のだろうか。

 太陽がさらに傾いていくにつれ、壁に投影された光も次第に形を変え、薄

らいで、記号の形も見えなくなっていく。だが、一旦目に焼き付いた五五五

の印象だけは鮮やかで、いつまでも消えない。どうしても何か意味があるよ

うに思えて、インターネットで調べてみたが、過去に放映されたアニメヒーロ

ーの名前であったり、どこかの居酒屋の名前は出てくるが、獣の番号のよう

な、何かしら意味のあるものはヒットしなかった。

 だが、もしや? と思っていつも見ているブログサイトを開けてみて驚いた。

そこは、昨年あたりからはじめられた物語のブログなのだが、通しナンバーが

つけられていて、毎日一番づつ足されていく。確かあれが……そう思いながら

開いたわけだが、案の定、この日がゾロ目の日だったようだ。

 第五五五話。今日がその日であることを、太陽が知らせてくれたようだ。

                               了

続きを読む


読んだよ!オモロー(^o^)(2)  感想(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。