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第九百十八話 忘れもの [文学譚]

 日曜の午後。夕方になってじりじりと頭の上から照りつけていた太陽が西の空に傾くと暑さは幾分ましになっていて、その上生ぬるいものではあったが首筋のところを通り過ぎていく風のおかげで表を歩いているぼくをずいぶんと過ごしやすい気分にしてくれていた。家を出るときにはハンドタオルを手にしていたが、汗で湿ったそれはいまはほとんど乾いていて、ただ手に握っているだけの荷物になっていたのだが、そのタオルの無用さを確かめるために癖のようにして額をぬぐってみたがやはりふき取る汗はなく、乾いたタオルの感触が妙に気持ちよかった。だが、そのときふと違和感を感じた。なんか違う。おかしいな、家を出たときもこんな感じだったっけ。その違和感を確かめるためにもう一度タオルで額をぬぐってみる。やはりなにかおかしい。私はなにか重大なことをしてしまったような気がして横隔膜の下あたりに空虚な部分ができあがるのを感じたが、それでもまだその違和感がなんなのかに気づくことはできなかった。

 小学生だった夏休み。ぼくは母に手を引かれ、兄とともに夏休みの宿題にするべく虫取りに出かけた。素でいた田舎町の真中にあった三百五十メートルほどの山の中腹。日傘を差した母は、いま考えるとあのときまだ三十歳にもなっていなかった。麦わら帽をかぶせられた兄弟はそれぞれに網を手に一生懸命山道を登っていた。四年生の兄は眼鏡に垂れてくる汗をぬぐいながら高い木の上で鳴いている蝉を果敢に狙っていたが、網が届くようなところにいる蝉はなかなかいない。そのうち母もなんとか蝉の一匹くらいは取らなければと思ったのだろう。兄の後ろで応援していたのがいつの間にか自ら網を手に蝉を追いかけていた。母の手から自由になったぼくもまた自分自身でなにか獲物を見つけて母と兄を驚かせてやろうと山道から外れた兄とは反対の方向へと歩き出した。蝉の声がしないところでも小さな蝶やバッタを見つけては追いかけた。足元御草むらの中に親子バッタを見つけて、かぶっていた帽子を使って親子バッタを捕まえたときになってはじめて、母も兄もどこにいるのかわからない場所まで来てしまっていたのだとわかった。急に不安になったぼくは帽子の中にバッタを置き去りにしたまま母と兄の姿を追い求めた。その後なんとか再会したはずなのだが、そこのところはなぜだか記憶からは欠落している。数十分後にはぼくを探している二人と出会ったような気もするし、日が暮れてから捜索隊によって見つけられたような気もする。とにかくあの帰り道で、ぼくは麦わら帽を無くしていた。それは母が兄のモノとお揃いで買ったもので、ぼくは結構気に入っていたので帰り道では虫を確保できなかったことよりも帽子を無くしてしまったことの方が大きな出来事だった。いつまでもそのことを気にしながら帰ったのだと後から何度も笑われたものだ。

 広いツバのついた麦わら帽をかぶる度にとおに往生した母のイメージが浮かぶのはこのときの思い出のせいなのだが、同時にこのような帽子をかぶって出かけるとたいてい失って帰ってきてしまうというのは我ながら不思議だ。再び額にタオルを充てながら頭の上から消えている麦わら帽に思い当たって、また忘れものをしたんだなぁと気がつく。忘れた帽子のことはいつまでも心に残り、そんなときにはいつも、なにかもっと大きな忘れものをしているのではないかという妄想が膨らむのだ。

                                                   了


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第九百十七話 諦める人 [変身譚]

 私は歌手になりたかった。そのためにレッスンにも通ったし、日々歌うことを忘れなかった。だけど。

 なにごとも諦めが肝心という言い方があるが、一方では決して諦めてはいけないという人もいる。どっちを選ぶかはその人の自由であるけれども、私は後者を信じ続けた。諦めずに続けさえすれば、いつか夢は叶う、そう信じてきた。だけど。

 十年間歌を練習し続けて、確かに声が出るようになったし、上手になったと先生が褒めてくれるとおりに、自分でも昔よりは上手くなったように思う。だけど所詮素人の域を出ない。とてもじゃないがプロの歌手になんてなれるはずもない。ボイスレコーダーに吹き込んだ自分の歌を聞きながら遂に私はそう理解した。

 歌を諦めた私は歌うことがだめなら歌を作る人になろうと考えた。もちろんこれまでも密かに歌をつくったことはある。歌っていると自然に湧いてくるものがあって、それを書きつけたりレコーダーに吹き込んだりしていた。だが、楽器というものを扱えない私にとって鼻歌以外には音楽を奏でる方法がないので、作曲などできないことは最初からわかっていた。それでも詩なら書けるだろうなんて考えたことがひたすら甘かった。思いつくままにノートに詩を書き、同じような言葉を次から次へと書き続け、きっといつかいい歌になるに違いないと信じて書いた詩は百篇ほどになった。しかし改めて自分で書いたものを見直してみればどれもこれもほんとうに似たようなものばかりで、先に同じような言葉とかいたけれども、そうではなく、同じ言葉を並べ方を変えて書きなぐっていたことに気がついた。結局私の頭の中にはそれほど語彙もなく、新しいフレーズを考え出す創造力もなく、もうこれはどうしようもないなと自分の頭を振ったり叩いたりしてみるものの、そんなことでなにか新しい詩が生まれるわけもなかった。そして私は歌をつくることも諦めた。

 それならせめて人を喜ばせることのできる者になりたいと考えた。人を喜ばせることとは……たとえば漫才師。しかしこれは一人ではできない。一人でできるのは漫談というやつだ。外国流にいえばコメディアン。おいあんた、こんなジョーク知ってるかい? どんなジョークかって? さぁ、それがわからないからあんたに聞いてるんじゃないかよ……ダメ。私にはジョークのセンスなどかけらもない。第一、人前でどころか、人と話をするのさえ苦手なんだから。作詞できなかった理由はそのまま会話にも影響する。知ってる言葉が少ないと、人と話をすることさえ難しい。私はすぐに漫談師になることを諦めることにした。

 言葉が苦手? 話すことが苦手? 言葉を話すことは地球上の生物の中で唯一人間だけの特権なのに、それができないなんて。そう考えたとき私の中にまたひとつ疑問が生まれた。私はずっと人間であり続けたいと願ってきた。だけどいま気がついた。それは難しいってことに。だって言葉が、会話が難しいんだもの。じゃぁ私はいったいなんなの? 人間であり続けたいと夢見ている私は。なにごとも諦めてはいけない、そう教えられたからそのようにしてきたというのに。私はたったいま気がついた。私は人間ではないのだということに。そして気がつくと同時に人間であることを諦めてしまった。なにごとも諦めが肝心なのだから。ブヒ。言葉にならない声が漏れる。諦めたとたんにいままで知っていた、知っているつもりだった言葉が頭の中からこぼれていく。そしておそらくその次には生き物であることすら諦めることになるのだということなど、思いもよらない私はひたすら地面の上を這いずりまわる存在になった。

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第九百十六話 声 [変身譚]

 ある朝目覚めると、声がマシンボイスになっていた。マシンボイスとはあの「ヴァレバレヴァレヴァ―宇宙人ダァー」みたいな、あのロボットボイスのことである。

「ナンダコレハ、コノ声ヴァ……」

 自分の声は自分で聞いもほんとうの声は聞こえないというが、これは明かにおかしい。おかしいがなんだか悪くない気もする。だいたい私は自分の声と言うモノが嫌いだった。低くて少ししゃがれていて、若いころから悩みの種であった。電話で話すとたいていはおじさんだと思われてしまうし、目の前でしゃべってさえ、一瞬女性である私の口から出た声だとは思ってもらえない。大人になってから、ある場末のスナックで歌っていたらそこのママに「あんたも煙草で声やられたのね」なんて言われたこともある。病院にも行って声帯手術を受けようかと思ったこともある。でもメスを入れて声が出なくなるのが怖くて辞めた。ボイストレーニングに通ったこともある。一年間のトレーニングで高い声は出るようになったが、どういうわけか普段話す声は変わらなかった。もう長年使ってきた地声に慣れ過ぎてて、今更高い声をだしてもどうにも不自然なのだ。中年という年齢になって、ようやく諦めはじめたというか、むしろこういう歳になると女性の声はおばさんのそれになって、ギャルみたいな高い声を出しているとむしろおかしいのだ。私にしてみれば実年齢がようやく声の年齢にと一致したといったところか。

 それにしても長年育んでしまった声へのコンプレックスというものはなかなか振り払えるものではない。そんな私に起きたこのマシンボイス変化は、むしろ喜ばしいことのように思えた。

 とここまで書いておいて、実は私は重大な嘘を書いた。ある朝起きたらマシンボイスになっていたのではない。実は先日交通事故に遭ってしまって喉がつぶされてしまったのだ。身体のほかのところに被害はなかったものの、運悪く喉のところを強打してしまい、息ができないくらいになって死にかけたのだが、幸い声帯を失っただけで済んだ。しかし声が出ないのは困るだろうということで、人工声帯を取りつけてもらったのだ。

 かつての人工声帯は悲惨なものだったが、二十一世紀中半ともなると技術は進んでいた。基本はロボットボイスだが、昔からカラオケや迷惑電話撃退で使われていたボイスチェンジャー技術でさまざまに声を変えることができるのだ。それだけではない。キーコントロール付きである。そう、もはや私は自由自在な声を持つことができたのだ。

 声帯手術を受けようと思ったり、ボイストレーニングを受けたあの頃の悩みが嘘のようだ。かわいらしく振舞いたいといには高い声にシフトして鈴のような声で話す。怒りをぶちまける時にはドスの利いたおっさんの声を出す。誰かを説得する時にはちょうどいい頃合いの太い声を出す。私は魔法の声帯を持っているのと同じだった。

 これで散々悩んできた歌だって……私は声に自信がない癖に大のカラオケ好きで、自分では歌が上手いと思っていたのだが、あるとき自分の歌を録音してみてからますます自分の声が嫌いになったという過去があるのだ。しかし今は……。新しい声を手に入れた私は、事故以来の全快祝いという名目で友人を誘ってカラオケの店にへ行くことにした。ここではじめてみんなに新しい私の声を披露するのだ。

 テーブルについた私はすぐに選曲をしてマイクを握った。J-Pop女王といわれる歌姫の名曲だ。ハイトーンの部分があるこの歌も私の新しい声なら大丈夫。首の横についているボイスコントロールキーを少しさわってキーを合わせる。イントロが流れて私はかわいらしい声で歌いだした。だが、みんなは以前私の歌を聞くときにはそうしたように軽く耳をふさいだり、隣同士で話をして歌から意識をずらして我慢していた……。

 マシンボイスによる新しい声はとても素敵だったが、音痴まではカバーすることができないということを私はすっかり忘れていた。

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第九百十五話 一文字苦no [日常譚]

 デスクの上に屈みこんでいるその顔を白く光らせているディスプレイには、真っ白な紙に見える画像が映し出されていて、カーソルと呼ばれる電気の印が一か所にとどまって軽く点滅している。キーボードが操作されてなにかが入力されるのを待っているのだが、たった一文字が書き込まれては消されてまた書き込まれては消されてが繰り返されている。さきほどからキーボードの上に両手の指を徘徊させているのは龍介という男なのだが、その左手は自分の髭だらけの顎をさすってみたり口から鼻にかけてを撫でてみたりしてはまたキーボードに戻している傍ら、右手はひたすら黒いキーボードの上を右から左へ、上から下へと行ったり来たりさせているのだ。あるとき、ふうと息を吐いたかと思うとおもむろにAと書かれたボタンを左手の人差し指が推してみる。すると画面のいちばん右上に「あ」というひらがなが現れた。

「あ」の文字はその後ろに点滅するカーソルを控えたままいつまでも「あ」という一文字のままで、その後をフォローする文字はいつまでたっても現れてこない。なぜならまたしても龍介の両手がキーボードと顔の間を彷徨い続けているからだ。

 龍介はまだ作家になりきれないでいる自称物書きだ。文章を書くことにはそれなりに自信があり、これまでの人生でなにか文字を書くのに困ったことなど一度もない。若い頃から小説を書いてみたいと思ってはいたが、なかなか踏み切れないままに人生の後半を迎えてしまっているのだ。定年を間近に控えた年齢になってようやく一念発起して得意な文章を書き連ねていこうと考えた。最初の数十枚はいとも簡単に出来上がり、その後も百枚前後の作品を次々と書き上げていった。妻に見せると面白いというし、友人に読んでもらっても、読みやすいよなどと悪いことは言われなかったので、いい気になっていたが、こんなに簡単に書けていいはずがないと思いなおし、改めて小説の指南書を何冊も読んでみた。すると、自分がなんと思いあがっていたのか、文章が得意だなどとよくも思っていたものだと、反省すべきことが次々と露わになってきて、そうしたことを胸に刻めば刻むほど、得意だと思っていた文章が一行も書けなくなってしまった。とりわけ、小説書きに必要だとされる「正確な描写」については、そうたやすく書けるはずがないとする某作家の言葉が深く脳裏にしみ込んでいて、では自分がいともたやすく書いていたあれはまったく正確さを欠いていたのに違いないと認識した。その後こうした思いはますます深く停滞して、一行どころか一文字も書けなくなってしまったのだ。実際には書くというよりはキーボードで打ち込むという作業なのだが。

 龍介は画面に現れた「あ」という文字をじっと見つめる。はて? ぼくはなにを書こうとしたのだっけ。「あ」……あれから……いやちがうな、あたし、でもない。あの頃……全然違う。ああーだめだ。削除。やっとの思いで打ち込んだ「あ」の一文字をまた消してしまい、視線が白い画面を泳ぎはじめる。なんてこと。このぼくが? このぼくが! このぼくが一文字も書けないなんて。

 急に思いだす。小学校に入ったばかりの作文の時間を。一年生になったばかりの生徒の前には一枚の原稿用紙が配られていて、みんなそれぞれに鉛筆をかたかた言わせて作文を書いているのだが、龍介はいつまでも白いままの原稿用紙を見つめていた。まもなく終了のチャイムが鳴ろうかというころ、女教師が近付いてきて龍介の真っ白な原稿用紙を発見した。せめて名前だけでも書きなさいと言われた龍介は、へたくそな文字で一年一組と書き、その後ろに名前を書いた。そのとき急にひらめいて、題名のところにあることを書いた。

「書くことがない」

 書くことがないということを書こうと思いついた龍介は、これでいけると思った。本文のところに鉛筆の先を当てて、「ぼくは何も書くことがない」と、題名と同じことを書いたとたんにチャイムが鳴って、作文用紙が回収されてしまった。

 まるでいまの自分はあのときの、あの一年坊主と同じだ。龍介は一人苦笑いする。だが、大人になったいまは書くことがないわけではない。書きたいことは山ほどある。なのに最初の一文字が書き出せないでいる。こういうのをスランプというのだろうか。いやいや、まだはじめてもいないのに、スランプだなんて、ぞこがまず間違っているんだなぁ。独り言を言い、ため息をついて、肩を落とした。

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第九百十四話 視っ点の? [文学譚]

 小学教師である渡辺は自慢のタブレット端末を手に六年生の教室に立っていた。

「今日はみんなに”視点”という話をしてみようと思う。視点って、わかるかな?」

 既に前回の授業で話をしているので、ほぼ全員がはーいと元気な返事をした。

「これ、先生が持っているもの、知ってるね? そう、タブレットだね。先生今日はこれをこの映写装置につなげて画面を前のスクリーンに映し出してみんなに見せます」

 渡辺は言いながらタブレットを機器をつなぎ、画面をスクリーンに映して見せた。

「さぁ、これ、知ってる人」

 地球の形をしたアイコンを指さすと、何人かがはーいと答えながら手を上げ、もっとも自己顕示欲の強い一人が「ガーグルアース!」と知識をひけらかした。

「ああ、そうだね、その通り。では、これを……クリック!」

 渡辺がアイコンをクリックすると、スクリーン全体に宇宙が映し出され、その真中に地球が浮かんでいる。

「これはなに?」

「地球でーす!」

 そうだねと言いながらタブレット画面を指でなぞって地球を拡大していく。すると地球はどんどん膨らんでいき、日本列島がクローズアップされていく。生徒たちは少し興奮しながら、あ、日本だ日本だと声を上げ、さらに列島が拡大され、自分たちの地域、この町の姿が見えてくると、先ほどの自己顕示欲が「ああー! この町だぞう!」と奇声を上げた。さらに画面を拡大していくと、町の東南にあるこの小学校の上空が映し出された。

「わぁ、うちの小学校だ!」

「先生、どうしてこんなことができるの?」

 別の生徒に訊ねられたが、渡辺はきちんと答えられない。

「あ、ああ、これは地球の周りをまわっているGPS衛星っていう人工衛星に搭載されたカメラからの映像……だと思うんだが……」

 渡辺は、たぶんそんな事だろうと思うことを自信なげに答えながら、さらに拡大を試みてみる。普通は、学校の上空写真までしか見えないはずなのだが、スクリーンが大きいだけに、意味もなくもっと行けそうな気がしたのだ。すると、画面はさらにクローズアップされていき、天からの角度も斜めになり、横になり、校舎の窓が見えてきた。この六年三組がある三階の窓に近づいてみると、中の様子まで見えてきた。黒板の前でタブレットを捜査している渡辺の姿、スクリーンを見ている生徒たちの姿。そうしたものがリアルタイムに映っている。こんなことができるんだ。すごいなぁ、最近のアプリは! 渡辺自身、はじめての体験に驚きながらさらにクローズアップを試みる。どういう仕掛けかわからないが、既にカメラ視点は教室内に入っており、渡辺が立っているあたりからの視点で生徒たちを映し出している。さらに拡大。前に座って目をキラキラさせながらスクリーンを見つめている坂田君がアップになる。さらに拡大。顔、鼻、カメラは坂田君の鼻の中を大きく拡大して真っ暗になった。暗転が続いて終わりかと思うと、急に青みを帯びて、星空が広がった。その真中あたりに青い星があって……地球が浮かんでいる。

「せ、先生、いったい?」

 生徒たちが渡辺に質問する。

「しぇ、しぇんしぇい……」

 先ほどの坂田君が悲鳴を上げた。

「く、くしゃみがでそうでしゅ!」

「え? さ、坂田君!」

 渡辺はどうしたらよいかわからないまま、タブレットの中の地球を眺めていた。

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第九百十三話 夢中症 [妖精譚]

 なんでこんなに暑いんだ。じっとしているだけでも体中に汗が流れ出す。八月生まれで暑いのは平気なはずなのに、これほど暑いとちょっと身体が心配になってくる。暑さには平気だと思っているから普段はほとんどエアコンをつけない。うちのエアコンは、夏用というよりは冬の暖房のためにあるようなものなんだ。冬の寒さ、あれは堪える。11月にもなると凍えてしまうんではないかと心配になってすぐに暖房をつけるくらいだ。だが、夏は違う。窓を開け放ちさえずれば、心地いい風が入ってきて、汗なんかすーっと引いていく。いや、むしろあの風の気持ちよさを求めずに冷房をつけてしまうなんて信じられないくらいだ。自然の中で自然の風と共に過ごす、それこそが生き物の喜びだと思うんだなぁぼくは。

 とはいえこの暑さ。昔は日射病に気をつけろなんてよく言われてた。炎天下で帽子もかぶらずに遊んでいるなどとんでもないって、母親によく叱られたものだ。ところが今は日射病なんて言わなくなったようだ。最近聞く熱中症ってやつ。あれは炎天下じゃなくっても倒れてしまうんだってね。太陽の直射を避けて家の中にいてさえ、室温が上がり過ぎて熱中りをしてしまうってことらしい。いまのぼくは冷房もつけずに窓を開け放しているものの、汗がだらだら。まさに熱中症一歩手前ってところではないのかしらん。熱中症の予防のためには水分補給が大事だっていうから、さっきからどんどん水を飲んでいるからまぁ、大丈夫だろうけどね。

 冷房をつける? とんでもない。八月生まれで夏には強いと豪語してるんだから、そんなみっともないことできない。……って表向きは言ってるけど、ほんとうは最近収入がおぼつかなくって、電気代が恐いんだよ。冷房なんてつけはじめたら癖になっちゃうでしょ。最初はちょっとだけって思っていても、冷房の涼しさになれちゃうと、もう少しだけなんて思って、結局一日中、一晩中冷房の中で過ごすようになる。そうして夏の終わりにやってきた電気代の請求書に目を回してしまうのが眼に見えている。だからぼくは絶対に冷房をつけない。どうしても我慢できないときには街に出て冷房が利いている店に入って涼むんだけど、いまは、この窓外の暑そうな日差しを見ると、とてもそんな気にさえなれない。いっそ大雨でも降ってきたらいいのに。いや、どうせ異常気象だというのなら、真夏に雪なんて降ってもいいんじゃないの?

 ふと思いついた真夏の雪という言葉に嬉しくなって窓外に目をやる。と、なんだか白いものがちらちらしている。なんだ? 嘘だろう? いま思ったことがほんとうになったのか? あれは……雪……雪でしょ? ほんとうか? 信じられない。窓から手を差し出すと、掌に落ちて来た白いものは確かに雪だ。温もった掌の上では雪はすぐに溶けて水になってしまったが、冷たさが瞬いて消えたのがわかった。こんなことってほんとうにあるんだ。ぼくは信じられない気持で空を見上げた。雪はますます量を増やしている。天にいる人が間違えたのか、あるいはぼくの思いつきに賛同したのかわからないけれど、とにかく真冬ですらめったにないような大雪の気配だ。これは吹雪くかもしれないな。思っているうちに雪はどんどんベランダにも積りはじめ、階下の通りを見ると、道にも積りはじめていた。なんてことだ。こんなことってあるのか? 雪はあっという間に通りを隠し、世間を真っ白に塗り替えていく。

 こんなことってあるのか? これだけ大吹雪で雪が積もっているのに、ちっとも寒くない。寒くないどころかいつまでたっても暑くて汗が止まらない。おかしい。何かがおかしい。これって……もしかして夢じゃないのか? 涼しさを求めるあまりにぼくは夢をみているんじゃないの? 雪なのに寒いなんて!

 目を開けると白い服を着た人が覗き込んでいる。気がつきましたか? もう大丈夫ですよ。何が? 何が大丈夫なの? ここはどこ? 家じゃないの? ははぁ。白い服の人は看護師だ。だとすると、ここは病院? 窓外に目をやる。まだ雪が降り続いている。なんだ? 夢じゃなかったのか?

「いま身体を冷やしていますからね、もうすぐ正常に戻りますよ」

 正常に? 戻る? 何から?

「ぼ、ぼくはもしかして熱中症に?」

「心配しなくていいですよ。熱中症ににていますけどね、あなたは夢中症で運び込まれたんですよ。こうあってほしいっていうのが夢になって、余りに思いが強すぎるとね、その自分の夢に中ってしまう症状の人が、ときどきいらっしゃいます。そういうのを夢中症っていうんですよ」

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第九百十二話 かわいいひと [変身譚]

 ああっ、し、しあわせ! 冷たいのに口の中でとろけるあまーいの、これが大好き。お姉さんが時々お土産 に買ってきてくれるパフェというもの。世の中にこんなに美味しいものはほかにはないのではないかしら。花子はそう思っているらしい。もちろん食べ物以外に も花子が好きなものはいろいろある。たとえば大事なものボックスに入れてあるピンクの貝殻とか、小さな文字盤が可愛い腕時計。ほとんど使わないままにとっ てある赤いマニキュアの小瓶。これは部屋の片隅にある棚の上においてある。棚にはほかにもふわふわした毛質の何かで作られたウサギのぬいぐるみや、きらき ら光る腕輪なんかがきちんと並べられている。とにかく可愛いものが好きなのだ。

 花子が可愛いものばかり集めているのには理由がある。なぜ 可愛いものが好きになったのかはわからないが、可愛いものに囲まれていると、自分もその一部になれるような気がするのだ。女の子はみんな可愛いものが大好 きだ。花子も同じ。同じだけれども、たぶんほかの女の子よりも強い気持ちで可愛いものを愛していると思う。だってそうでもしなければ生きていけないような 気がするんだもの。ほかの女の子はみんなその子自身が可愛いから、モノに頼る必要なんてないじゃない。花子はそう考えている。自分は可愛い存在でありたい けれども、ほんとうのところはどうなのだろう。自分自身の姿を鏡に写してみてもわからない。どんなに冷静に客観的になったつもりでも、自分のことなんて クールには見られないものだ。自分のことが可愛いと思っている者は五万といるだろうけれど、ほんとうにその通りだとだれもが認めるのはそのごく一部だと思 う。花子もその一部に入っていたいと願うっていることは間違いないけれども、実際のところは……。そう考えだすと思わず声にならない声を漏らしてしまう。 ぐううともくうんともわからぬ悲しげなうめき声。自分でも知らずそんな声を出すことがあるらしい。悲しげな声を漏らす度にお姉さんが心配してくれる。

「どうしたの、花子ちゃん? なにか悲しいことでもあったの?」

 お姉さんがそういうからやっぱり悲しげな声が出たんだと思う。花子は首を横に振って否定してみるが、その表情はやっぱりちょっと悲しそうなんだろうね。お姉さんは表情を読み取るのが得意なだけに、ごまかすことができない。

「あらぁ、もしかしてまた不安になってるんじゃない? 大丈夫よ、あなたは可愛いよ。とても可愛い子」

  こんなときお姉さんはこんな風に慰めてくれるのだ。可愛い可愛いと。もちろんうれしい。自分では客観的に判断できないから、ひとから可愛いなんて言われる とついその気になっちゃう。ましてやお姉さんが言うんだもの。お姉さんは決して嘘をつくひとではない。まじめで正直でとてもいいひと。そのお姉さんがいう ことは真実であると思いたい。思いたいんだけれど……どうしても心からは信じられないんだ。自信がないからかな。だって……

 花子は心の中 でいつも揺れている。外見からはそんなにナイーブだと誰も思っていないだろう。身体が大きくて……普通の人間の数倍ある……全身剛毛に覆われていて、声 だってとてもかわいらしいとはいえない低いうなり声しか出せない花子。それでも人間に、いや可愛い女の子でありたいと思い続けている花子がもともとなん だったのかなんて、いまさらいう必要はないし、誰もそんなひどいことを言おうとはしないのだった。

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第九百十一話 48 [可笑譚]

 会場は思っていたよりも小さく、集まってくるゲストたちも思いのほか少ないな。レイは内心そう思いながら、しかし昔とは違うんだと自分に言い聞かせた。アスカが口元に笑みを表しながら両手にシャンパングラスを持って近づいてきた。

「思ったより盛況ね、そう思わない?」

 レイとは反対のことを言うアスカの言葉にあやふやに答えて差し出されたグラスを受け取った。

「まぁ、そうかしらね……」

 二人は、他の仲間たちともそうだが、もう長いつきあいになる。これまでも充分に仲がよかったのだが、これから先もこうしたついあいを続けていけるのだろうか。ふと浮かぶ不安をこれまで何度打ち消してきたことか。しかしそのおかげで今日があるようなものなのだ。

 ここはホテルの宴会場。通常は結婚式等に使われることの方が多いのだろうが、百人程度を収容できるくらいの広さに仕切られていて、開場から三十分以上は過ぎているのに、会場にはまだ五十人くらいしかいない。プレスの人間だってもっと多いかと思っていたが、二組ほどしかいないようだ。つまりもはや今日のパーティーはその程度の価値しかないということなのだ。

 かつては日本中を揺るがすほどの人気を誇っていたアイドルグループAKC48だったが、あれから三十年も過ぎてしまった今では、グループが存続していること自体がミラクルなのであって、これであの人気が持続していたとしたら、それはもはや怪奇現象といわねばなるまい。第一、グループの名前が表すように、当初は四十八人の女の子が所属していたのだが、脱落していく者、卒業と称して独立していく者などが続出して、オリジナルメンバーで残っているのは五人にも満たない。結成十年後には人数も減りはじめ、現在ではオリジナルメンバーの五人だけがAKC48のメンバーなのである。司会者がステージ端に立ち、グループの発起人であるプロデューサーの春本に挨拶を促した。タキシード姿の春本は既に八十歳という高齢に達しているが、死ぬまで現役だと宣言して表舞台にでているのだった。

「みなさん、AKC48の結成三十周年パーティーにようこそおいでくださいました」

 春本は昔と変わらぬハリのない話し方で一通りの挨拶をしたあと、咳払いをして皺だらけの表情を少し動かした。

「既にみなさんもお気づきかと思いますが、AKC48が今日まで存続し続けてこれたものの、実質のメンバーは既に五人のみとなっております。これではもはや四十八を名乗るのには無理があるのではないか、そんな声も多々いただいております。そこで今日は、私からひとつ提案とともに新たな宣言をさせていただきます」

 春本は会場を見渡して、また咳払いをした。

「AKC48は、リネームして一層のアイドル活動を極めていくことを宣言します!」

 春本の後ろにたらされている緞帳に上から垂れ幕が下りて来た。

「レイ、アスカ、アツコ、サシフラ、ゴン、五人のメンバーは、今年揃って四十八歳になりました!つまり、48は人数ではなく年齢を意味することになったのです。五人は揃っていわゆるマル高。ご覧ください、新しい名前は……」

 降りて来た垂れ幕を指さしながら、春本が叫んだ。

「へーケーシー・フォーティエイト! 今後ともよろしくお願いします!」

 拍手喝采される中、ステージに向かいながらレイは小声で毒づいた。失礼しちゃうわ。私はまだ閉経していないのに!

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第九百十話 ちっちゃいおっさん [日常譚]

 ちぇっ、またか。こいつはほんとうに……。岡谷三郎はパソコンの前に座って一人で毒づいていた。会社にパソコンが導入されてもう十数年も絶つのだが、岡谷はいまだにこういう機械にしっくりこないでいる。導入当初はいったいどうしたらこんなものが使えるようになるのかと戸惑ったが、十数年の歳月は、なんとか一通りの作業を岡谷に教え込んでいた。それでもパソコンのソフトは日々バージョンアップし、いままでやっていたことが突然できなくなったり、やり方が少し変わったりするので、岡谷のような人間は機械にバカにされているような気がするのだ。

 いつもどおりに文字を入力しただけなのに、画面が少し淡くなって動かなくなってしまう。三つ目のソフトを立ち上げただけなのに機械が固まってしまう。さほど処理能力の高くない中庸の機種だからなのか、少し古くなってしまったからなのか、そんなことは岡谷にはわからないが、とにかくひとつもいうことを聞いてくれないと思うのだ。

 ったく! なんやこの機械は。ちゃんということを聞けよ! 舐めとんのか? おいおい。ここで止まったらあかんやろう! ああっ! またか。またへんなんなって。これ、どうやったらええねん。どこを! どう! 押したら! 動いてくれるんや?

 岡谷の隣には課員の由里子が座っている。彼女は岡谷から指示が出されたデータをパソコンに打ち込んだり、さまざまなデータをまとめるような仕事をしているのだが、隣にいる岡谷課長のことが気になって仕方がない。気になるというのは、心配だとか、好きだとか、そういうことではない。このかなり年上の上司がパソコンに向かっていつもぶつぶつしゃべっているのが耳触りで仕方がないのだ。向かいにいる先輩社員を見ると、彼もまた黙ってはいるがしかめっ面で岡谷の方にちらちら目をやっている。

「ほんまになんやねん。こんな機械になんで舐められなあかんのや」

 由里子は黙って無視するようにはしているのだが、たまにキレそうになる。だからキレる前に一言注意をしてやろうと思う。だが相手は上司だ。下手な言い方をして怒らせてもまずい。もう少し様子を見るかと思ってまた我慢する。

「チェっ! どないなってんねん、これ。もうノートパソコンに変えるぞ!」

 岡谷課長が言うには、ノートパソコンに変えるぞと言うと、動き出すのだそうだ。パソコンはひとの言葉がわかるのだという。きっとこの中におっさんが入ってるんやとも言っている。

「おーい! おっさん。ちゃんと動かんかい! そこにおりまんのんか、おっさん。おいおーい、おっさん!」

 由里子はくすっと笑ってしまう。出た! おっさんワード。岡谷課長は機械を前にテンパってくるとパソコンに向かって”おっさん”を連呼しはじめるのだ。

 おっさん、ちゃんと動け。こら、おっさん!

 由里子は遂に口を出した。

「課長……パソコンの中からちっちゃいおっさん出てきますよ、やかましいゆうて」

 一瞬、岡谷課長の手と口が止まった。由里子はしまった。言い過ぎたかと思って固まりかけたが、岡谷の視線は由里子には向けられていなかった。課長の視線はパソコンディスプレイに釘付けだった。由里子も何気なくそこに目を向けた。表計算ソフトの画面だったはずのディスプレイはブルー一色に変わっており、その真中が敗れたようになって、その中からまさに白雪姫の小人にも似た感じの小さいおっさんが何人か顔を突き出している。そしてその一人が小さい声で岡谷に向かって言った。

「おっさん、ちょっとうるさいわ」

                                                      了


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第九百九話 書き苦気涸 [脳内譚]

「言葉を正確に記述することこそが、文章を書くことにおける唯一のモラリティーである」

 二十世紀初頭にアメリカで生きた詩人で音楽家のエズラ・パウンドが言ったそうである。見習いの私はこれまでも間違いのない記述には気をつけていたつもりではあったが、改めて自分を戒めるために紙に書いて目の前の壁に貼ることにした。

「言葉を正確に記述する」

 黄色い付箋紙に書いて壁に貼った。デスクの前の壁にはすでに様々な紙が貼られている。ピンクの紙には「文学は格好悪い」、黄色い紙に「形容詞はうざい」「ストーリなど考えるな」これらは最近貼りつけた”書く”ことに対するメモだが、それ以前に貼った黄色く変色した紙には、親を大切にするだとか、余計なことは言わないなどと、人生格言みたいなものも貼っ付けている。まぁ、こういうのは良しとしよう。だが、最近の、書くことに対して戒めたメモはなんだかずっしりと重く、これによってむしろ一文字書くことさえ躊躇してしまう雰囲気を自分の中に形作ってしまった。

 そもそも「言葉を正確に書く」とはどういうことなのだろう。エズラ・バウンドの言葉を紹介している先生は、「正確に書こうと思ったら、言葉はそんなにすらすら書けるものではない」とさえ言っている。それに引き換え私の書き方の軽いこと。これでも私自身は間違いなく書いているつもりなのに。もっと言葉を吟味して、読み返して、言葉を選び直して言い換えて書けということなのだろうか。

「インプロビゼーションのように書く」

 これは別の先生からいただいた言葉だ。前もって考えた言葉が小説の中で使える可能性はゼロに近いという。これには私もいたく共感したから、紙に書いて壁に貼っ付けた。しかし、吟味しつくして書くのと、即興的に書くのは正反対のやり方だ。共通しているのは、どちらも難しいということくらいだ。私はため息をついてデスクに肘をつき、そのままの姿勢で頭を抱え込んだ。ついでに古参作家みたいに紙をぐしゃぐしゃっと掻きむしった。何本かの長い毛がはらりと落ち、ついでに乾いた頭皮が剥がれ落ちた。いや、頭皮が先に落ちたのかもしれないが。

 とにかく、「正確に書く」ことに被れてしまった私はこの時から異常に遅筆となった。いままでは原稿用紙の十枚程度なら三十分で書きあげていたのに、いまや一文字数分だ。ここまで書いてきたこの文章も、三日はかかっている。いったいどうしたというのだ。正確に書くとはこういうことなのか。ここまでの記述をすべて選択して削除ボタンを押したい衝動に駆られる。しかしそんなことをするとこの三日間が無になってしまう。それでもいい。そうすることの方が大事なんだ。先の先生がそう言っている声が聞こえる。だめな文章を後生大事に持っていても仕方がない。ある芸術家は過去の作品すべてを破棄して新たな創作に臨んだという。文章だって同じ。駄文はあくまでも駄文だ。

 もし明日、いま読んでいるこのページが真っ白になっていたとしたら、それは私が自分の駄文をはっきりと認識し、正確な文章のための次の動作に入ることができたということだ。だが、そうでなければ……このページがこのまま存在し続けていたとしたら……私はもう、書くことを諦め、ほかの何かをするために、どこかに足を運んでいる最中かもしれない。

                                               了


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