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第五百十二話 皺 [日常譚]

 皺というものは、歳を重ねると共に自然と増えていくものじゃが、おおよそ

よく動かす筋肉の端っこの部分には皺が多いわな。たとえば目尻とか、口

の端とかな。つまり、常に皮が伸びておれば皺にはならんが、 しょっちゅう

皮に筋が入っておるような場所には皺ができるわの、わかるじゃろ?人間

は、生まれたての時には、どこにも皺なんてなく、綺麗なつるっつるの皮を

持っておるもんじゃな、そうじゃろ?

 ところがそれ、たまに眉間に深い皺を刻み込んでおるものがいるじゃろ。

眉間というものは、そんなによく動かす場所ではないわの。というか、眉間

に皺が入るのは、しかめっ面か怒り顔くらいじゃないのかな? つまり、

間に皺が入っているときは、あまりいい精神状態ではないときだと言える

のではないかの? 眉間にしわが入る回数が多いと、次第にそこに皺が

刻み込まれており、しかめっ面をしていないときでも、眉間に皺が入った

状態になる。これは、あまり良くないのではないかな? 眉間に皺が刻み

こまれている人間は、いつも怒っていたり、悩んでいたり、困っていたりす

る、そういう癖を持った人物だといえそうじゃの。わかるかな?

 そう、常に眉間に皺が入っている人物の側で暮らす人間にとって、あま

り心地よいとは言えんわな。それに、その皺の持ち主自身にとっても、い

つも困っている、怒っている、悩んでいる、というのは、何か精神的によい

状態とは言えないと思うのじゃな。どうじゃな、みなさん。

 それ、森山くん、どう思うかね。君の眉間には、深い皺が刻まれておるが、

何か困った問題でも抱え込んでいるのかな?

 いえ、先生。違います。僕は、生まれ落ちたときから、既にこの眉間の皺

があったそうです。これが僕の顔なんです。

 ……そうか。すまん、森山くん。それはすまないことを言ったの。森山くん、

君は、生まれ落ちた時に、すでに怒ったり、困ったり、悩んだりしておったと、

そういうわけなんじゃな? 違うか?

                                   了


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