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第四百八十四話 地下組織 [妖精譚]

 地下組織とは、表からは分からない隠れた地下に潜って活動をする組織のこ

と。戦争や闘争中なら敵の組織に見つからないように、そう、対立する組織に

抵抗するためのレジスタンス分子などが、よく地下に潜って戦う準備をしてい

たりする。

 現代において、いわゆるアンダーグラウンドという言い方がある。アンダー

グラウンド、略してアングラ。アングラ劇団とか、アングラ映画とか、アング

ラバンドとか、主には水面下で文化活動している者を表している。これらも、

一種の地下組織とみなすことが出来るのではないかな。尤も、最近の音楽業界

では、メジャーに対してインディーズと呼ばれるが。

 さて、かくいう私も、このアンダーグラウンドというか、地下組織で活動し

ている。なんの活動かと聞かれると、非常に説明しにくいのだが。いやいや、

地下鉄職員でーすとか、百貨店の地下食品売り場で働いてまーす、なんていうオ

チにするつもりはさらさらない。もっとアカデミックなものだ。アングラ舞台芸

術とか、アングラ映画製作とか、アングラミュージックとか、そういう具体的な

単一の文化活動を行っているわけではなく、そうしたヒューマンな創作活動全般

にかかわっているといえる。

 音楽にしても演劇にしても、最近のアーティストというものは、すぐにメジャー

シーンに出ようとする。何のためかというと、お金のためだ。少しでも早く人前

に露出して、有名になって、ひと稼ぎしたいと考えている連中ばかりだ。マスコ

ミの側もよくない。常に新しい情報を求め、いち早く新たな人材を商業ベースへ

投入することによってひと稼ぎさせてもらおうと考えている。そして、そうした

アーティストたちは、一発だけ当てて、そしてメジャーシーンから消えていく。

つまり、ほとんどのアートが、ただの金儲けの道具になり下がり、芸術という崇

高な世界から逸脱してしまっているのだ。

 アンダーグラウンドという考え方が芸術の主流であった頃、芸術家たちは、

られたものにだけ理解できる芸術の発散に、誇りを持っていた。アングラがマイ

ナーで厭だということではなく、むしろ自分の作品をメジャーに晒すことを拒否

すらしていたといえる。それほど、自分が創りあげた作品に命を注いでいたし、

そういう作品を生み出したいという気概を持っているのが芸術家というものだっ

た。

 私自身は、芸術家でも音楽家でもない。何かを生み出す能力など持ち合わせて

いない。だが、芸術を生み出す能力を増やし守りたいという強い想いだけは誰に

も負けない。だから、この地下組織を立ち上げたのだ。

 私が密かに運営している組織の名は、アンダーグラウンド地下組織。なんだか

二重にダブった名称のように思われるだろうが、そうではない。活動内容は名称

通り、アンダーグラウンドの地下組織だ。少し分かりにくいかもしれないので、

いささか説明しておこう。先ほども書いたとおり、アーティストを気取る者たち

はすべからくメジャーに行こうとする。だが、それは芸術の死を意味する。そこ

で、私は芸術をアンダーグラウンドに留めておくことによって、そのアート性を

高い位置にキープ出来ると考えた。メジャーにいかなくても、アンダーグラウン

ドで素晴らしい創作活動が出来る、こちらで暗躍していた方が、アートの高みに

行けるし、むしろ有名になれる!こんな概念を世の中に定着させたいのだ。だが、

こうしたことを大々的に広げてしまっては、私の主張そのものがアンダーグラウ

ンドの価値を失ってしまう。だから、私自身も水面下で、こうしたアングラフィ

ロソフィーを拡散する。

 リンカーン元アメリカ大統領の言葉を借りれば、「アンダーグラウンドによる、

アンダーグラウンドのための、アンダーグラウンド活動」なのだ。

 私、根暗自見男が主催するアンダーグラウンド地下組織。さあ、芸術の深淵を

目指すアーティストのあなた、私と一緒に頑張ろうではありませんか!

                               了  

 

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