第四百六十六話 ペット被災。 [日常譚]
「どうして、こんな事になっちゃったのかなぁ?」
二郎は心の中でそう思った。俺らは、真面目に暮らしているのに、仲間が次々
とひどい目に合っていく。今まであたたかい家の中でぬくぬくと幸せに暮らして
いた娘も、一人取り残されて、一家はどこかへ消えてしまった。つい最近まで元
気に走り回っていたあいつも、大怪我をして死んでしまった。
俺たちが何をしたというのだ?何もしてないさ。本当に何も。何もしてないのが
悪いだなんて言わせないぞ。何もしないのが俺たちなんだから。言ってみれば、
何もしないことが仕事みたいなものなんだから。俺たちが悪いんじゃない。悪い
のは奴らだ。みんな人間の仕業だ。
どこか地方で原発とやらが壊れたって?それで人間が住めなくなった土地に
ペットが取り残されて被災してる、それが俺たちかって?とんでもない。そんな
ローカルだけの話じゃないんだよ。国中で起きている事なんだ。
本当は家の中に住みたいんだよ。狭い家の中が安全だから。なのに、勝手
に放り出されてしまう。俺のかぁちゃんに子供が出来れば、子供たちはどこか
に連れ去られてしまう。その上、かぁちゃんは腹まで切られて。俺だって、タマ
を抜かれたよ。挙句の果てには俺たちゃ捨てられた。捨てられてもそれに気
がつかずに近所の公園でのんびり暮らしていたら、向こう通りに渡ろうとした
かぁちゃん、大きな箱が走ってきてぶつかって大怪我して死んじまった。
なんだよ、あれは。あんな四角い箱がなんで動いているんだよ。あれもこれ
も、全部、人間の仕業だろ?俺らはみんな静かに暮らしたいだけなんだよ。な
のに人間が手出しして、俺たちを散々弄んで、どっかに放り出して、逃げて行
って・・・。俺たちはいい迷惑なんだ、ほんと。どうか、もう、俺たちにかまわず
に、ほおっておいてくれないかな、人間てやつは。
しかし・・・腹減ってきたなぁ。そろそろメシ、来ないかなぁ・・・・・・。お!来た
来た。俺の飯係が飯持って来たぞぉ!飯だ飯だ!早く早く、にゃーおーーん。
了