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第六百九十七話 ミサイル発射 [日常譚]

 困ったものだ。また隣の奴らがとんでもないことを目論んでいるようだ。

サイル実験。だいたい何故そのようなことが必要なのかわからない。実験

だとかテストだとか言っているようだが、面白がってやっているとしか私に

は思えないのだ。窓外を眺めながら野田山は頭を悩ませていた。どうやった

らやめさせられるのか、もし、こちらに飛んできたらどうすればいいのか、

果たしてその場合、迎撃などということが自分にできるのか。

 だいたい頭がおかしいとしか思えない。子供がやっているのかと思った

ら、親父も一緒になってやっているのだ。いや、違う。あそこの親父はもう

亡くなった。もともと親父がそんなことをやっていたものだから、子供が真

似してやっているのだ。ノブどんかテツどんか知らないが、ミサイルに妙

な名前をつけて。この間から奴らの領地でミサイル発射のための装置が

設置されはじめているのを知っている。あんなところから発射すれば、間

違いなくこちらに飛んでくるだろう。ほんとうに困ったものだ。どうしたらい

いのだ。

 頭を悩まし続けるまもなく、ついに実験が施行されてしまったようだ。十

二月十二日午前九時四十五分、それは発射台から飛び出した。ぷしゅぅ

と異様な音がして、我地の上空を飛び越えて裏の池に落下したようだ。

なんてことだ。やはり家に向かって飛んだではないか。ペットボトルで作っ

たミサイルといえども、危ないではないか。断固抗議せねば。だが、隣家

はややこしい。伸夫、哲夫兄弟は直ぐに逆ギレするし、母親は町内一の

クレーマーだ。だから誰も敵に回したくないので、町内会の誰ひとりとして

彼らに触りたい者はいない。

 ああー、文句もいえないのか。ほんとうに困った。

                                了                        


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