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第四百二十二話 3D複写機。 [空想譚]

「山田君!ついに出来たぞ!」

「社長!やりましたね!で、何が出来たんです?」

「社長じゃない、博士と呼べ、山田君。」

「わ、分かりました社長!で、何が・・・?」

「・・・これじゃ。スリー・ディメンション・ダプリケーター。」

「な、なんです、そのスリでションベン、ダブルケツって・・・?」

「あほか。3D複写機だ!」

「おお!3D複写機!・・・ってそれってもうあるんじゃないですか?ほらあのゼ

ロックスとかそういうの。」

「そうじゃない、立体コピー機だ。」

「立体!それも見たことある!」

「だがな、ワシが、我が社が作ったのはな、まったく同じものを作る機械なん

じゃよ。」

「まったく同じ・・・?」

「たとえば、ケーキと同じ形のものを作る機械は既にあった。だが、あれは塩

化ビニールを原材料にするから、出来上がったケーキは塩化ビニール製だ。

君、塩化ビニールのケーキは好きかね?」

「いやぁー・・・ビニールのケーキは・・・美味くありませんぜ、社長。」

「そうじゃろ?だが、オリジナルと同じ原料を入れてやると、まったく同じケーキ

が出来る。」

「つまり・・・小麦粉とか、砂糖とか?」

「それでは料理教室になってしまう。もっと根源的な原料じゃよ、炭素Cとか、

水H2Oとか。」

「ほぉ、炭素ですか。それは面白い。」

「おお、分かるのかね、山田君。ほら、そこのケージを見てみなさい。」

「・・・この白いケージですか?おおーウサギちゃん、可愛いねぇおお、珍しい三

毛ですね。」

「では、そちらの黒いケージを見てみなさい。」

「おおーこっちにもウサギちゃん。おお、こちらも珍しい三毛ですね・・・兄弟です

かね、この子たち・・・?」

「そうじゃない。同じ個体じゃ。」

「オナ自己タイ?」

「そうじゃない、おんなじ個体!」

「女の子たい!」

「面倒くさい奴じゃな、お前さんは・・・おぅい!出ておいで!」

博士が大きな声で呼ぶと、ガチャリとドアが開いて誰かが入ってきた。

「あ、これは社長!おはようござ・・・」

お辞儀をしながら山田は首をひねった。

「あれぇ?なら今まで俺がしゃべっていたのは・・・?」

振り返るとそこにも社長。山田はあわててお辞儀をする。

「おお、これは失礼!社長、速いですねぇ、さっきあそこにいたのに・・・?」

二子玉川博士は悪戯そうな顔をしながら、もう一人の自分と並んで見せた。

二人の博士は口を揃えて言った。

「どうかね、寸分変わらんじゃろ。わしらは。」

「社長が・・・二人・・・。」

「ワシは最初に作った試作機で自分をコピーしてみた。すると、私と寸分変わ

らぬこいつが生まれた。ワシの能力が二倍になったのと同じじゃな。そこで、

さらに機械に改良を加えて完成したのだ。おぅい!出ておいで!」

すると、再びドアが開いて、博士がもう一人入ってきた。

「あ!社長!おはようございます!」

三人並んだ博士を見ながら、山田は泣きそうな顔になった。

「ど、どれが本当の社長なのか・・・?」

「ふふ、どれも本物じゃ。だが、オリジナルはワシじゃ。」

三人の二戸玉川博士が口を揃えて言った。

「これからワシらはこの3D複写機を世界に広めるのじゃ。そうすれば、世の

中はさらに平和に、さらに自由になるじゃろう。」

「でも、人が増えたら食糧不足とか・・・」

「安心せい!食糧もコピーすればいいのじゃ。」

「これから一人はロサンジェルス本社へ、一人はベトナム本社へ行って、そこで

この機械の生産を始める。どうじゃ、これが新しい世界の夜明けなのじゃ!あー

っはっはっは。」

「社長、なんかその笑い声は、世界征服をたくらむドクターノオのような・・・!。」

「なるほど。では、ワシの事は今日からドクター脳と呼ぶのだ。世界は変わるぞ、

ワーッはっはっはっは!」

 こうして世界を股にかけたドクター脳の世界征服が始まった。

                              了


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