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第七百八十七話 膝上天国 [日常譚]

 私が床に座っていると、必ず膝の上にやって来る。頭だけを乗せるときもあれば、からだ全体を委ねてくるこ とだって。重いっていってどかせることもあるけれども、たいていはかわいそうだからそのまま膝の上で迎えてやる。まぁ、可愛いと思えば少々の重さなんかど うってことないもの。
 困るのは、テーブルで書き物なんかしているときに膝の上に飛び乗ってこられること。字を書くのは腕から先だからよさ そうなものだけれども、それだってやっぱり下半身ともつながっているわけだから、ちょいと方を動かすのにも膝の上に乗られていると、少々動かしにくいの だ。でも私が動けば膝の上も居心地が悪くなって離れてしまうから、できるだけ我慢うるようにしている。
 要は基本的に甘えん坊なのだ。甘え ん坊のくせに時折噛み付いてくるのがしゃくに触る。甘えてくるのは許せるとして、「腹が減った、飯はまだか」とか、「ちょっとなんで動くんだ、ぬくぬくし ているのに」とか言って怒るのはあまりにも自分勝手だと思う。そうした自分本意なことで噛み付くくせに、別のときには膝の上に顔を乗せたまま、首をのばし てきて、さすれという。首筋を優しくさすってもらうのが好きなのだ。そんなときはいい加減にしろ! 言いたくもなるのだが、やっぱり可愛さに負けてしまっ て、書き物の手を止めて首筋をさすってしまうのだ。
 ほんとうに同居人というものは厄介なものだ。これが犬や猫ならまあ人にも言えるのだけれども、立派なおっさんが膝の上に乗ってくるというのも、私個人としてはもう慣れっこだけれども、そんなこと誰にも言えないのがちょっとねぇ……。
                          了
読んだよ!オモロー(^o^)(3)  感想(0)  トラックバック(0) 
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