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第七百七十五話 以上! [文学譚]

「悩んで悩んで同じことばかり頭の中でぐるぐるしてる、そんなときあなたはどうしますか? 僕はね、もういやだ、僕は最低だ、以上! って口に出して終わりにするんです」
 やがて世界にアセンションが訪れると唱えている男がネットの中でそう言っている。アセンションとはより高い次元への移行ということらしいのだが、物事を大局的にとらえることができるからこそ、なにもかも「以上!」で終わらせることができるのだと思う。
  実際のところ、私の中にある悩みを「以上!」と言って終わらせることができるのだろうか? 頭の中でああだこうだ、どうすればいい? こうすればいい?  でもああしたらこうなって……ぐるぐる回り続ける思考を「以上!」と唱えて終わらせることができればすっきりすることだろうが、しかし、それってもしかし たら思考停止させるってことではないの? そうだ。「以上!」は悩んでいる思考を停止させる呪文に過ぎない。それで一旦はすっきりするかもしれないが、問 題解決には決してならないではないか。アセンション男にそう言いたい。するとアセンション男は言うだろう。それでいいのだと。悩んでも解決しない事柄は、 一旦思考停止させてクールダウンするが良いと。
 わかった。それはそうかもしれない。でも、次にまた思い出してぐるぐる悩んだら? そのときはまた「以上!」と言って思考停止させればいい。すると、永遠にその繰り返し? 小さなぐるぐるが、少し大きなぐるぐるに変わるだけではないの?
  まぁいい。とにかくぐるぐる回るマイナスの思考を終わらせたいのだから。 でも。考えているうちに頭の中ではなく、世の中がぐるぐる回っていることに気がついた。ぐるぐる、ぐるぐる。ぐるぐる、ぐるぐる。回っているのは世の中で はなく、私自身だ。なんだ、私が回っている。止めなきゃ。目が回る。ぐるぐるを早く止めなきゃ。これを停止させる呪文は……
「異常!」
 私は次の世界にアセンションした。
                                   了
読んだよ!オモロー(^o^)(7)  感想(0)  トラックバック(0) 
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