第四百五十六話 宇宙人の言葉。 [空想譚]
外宇宙からやって来たエイリアンは、高度な技術力によってあらゆる言語を
操ることが出来る自動翻訳機を持っていた。VAR(ヴァーチャル・オーギュメン
ト・リアリティ)システムによって本来の姿を隠し、地球人とほど違わない姿に
カムフラージュした姿で多くの地球人が集まっている場所、時間に地上へ舞い
降りた。彼らは闘争的なエイリアンではなく、目的はもちろん宇宙間平和協定
への勧誘だ。地球人は彼らの勧誘に答えてこそ、銀河宇宙サークルの一員と
して迎え入れられるわけだ。そうなれば、あらゆる技術やノウハウが伝授され、
地球人には未来永劫の幸福が約束される。
地球人に姿を変えたエイリアンは、街角に立って自動翻訳機のスイッチを入
れた。そして、そこにいる地球人を捕まえて、会話を求めるメッセージを語った。
「私トオ話シ、シマセンカ?」
通りがかった青年は、背の高い外国人に声をかけられて、ちょっと迷惑そうな
顔をしながら黙って立ち去った。
「私トオ話シ、シマセンカ?」
次に通りがかった中年男性は、ニコニコしながら返事をして立ち去った。
「あのね、お兄さん。ここは日本ですよ、ニッポン!私らは仏教の人だから、
モンモル教だかエボハの王国だか、そんな話は聞きませんよ~!」
地球人というのは、平和協定に興味を持たないんだろうか?エイリアンは
とても不思議に思って、言葉の選び方を少し変えてみた。
「チョット、私トオ茶デモシマセンカ?」
通りがかった女子高生の三人組は、金髪頭に茶色く塗った顔を思いっきり
歪めてきゃいきゃい笑った。笑いながら言った。
「ダッサー!表参道のこんなところで、お茶でも~だって!笑っちゃうしぃー。」
「ウィッシー!」
立ち去っていく女性型地球人の後ろ姿を眺めながら、エイリアンは母船に通じ
るトーカーに向かって言った。ピッピッピ!
「jkrvるいvh:にmづいえうヴんvじぇいrvm、うぇk]jhnv;ene!」
まもなく彼は地上から姿を消し、母船もはるか宇宙へと飛び去っていった。
了