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第四百四〇話 自信喪失。 [妖精譚]

 私は今まで順風満帆な人生を送ってきた。それほど大したことを達成してき

たわけではないのだが、さまざまなことが私の思い通りに動いてきたといえる。

自分の努力の成果とも言えるのかも知れないが、自分ではそれほど努力をし

たつもりでもないのに、希望する大学に入れた。在学中も何一つ困ることもな

く、挫折もしないで悠々自適なキャンパスライフを送って卒業した。高望はしな

かったとはいえ、希望の会社に就職できた。思わぬところで出会った素晴らし

い女性と結婚もした。コツコツとセールス活動を続けた結果、それなりの成果

を達成して、順当に昇進。まさか社長になりたいなどと思ってはいないわけだ

が、早い時点で部長にまではなれた。どういうわけだか、会社の移転などもあ

って、自宅に近いところに移ってきたし、なんだか何もかもが私の思い通りに

動いてきた私の半生があった。

 ところが、このところそれが思わしくないのだ。そろそろ体力が落ちてきたのか

なと思っていたら、痛風という病気になった。これではいかん、仕事にさし障ると

考えていたら、仕事も閑職に配置換えになった。徐々に若者に譲っていく年齢

なのだと言われればそうなのかも知れないが。自分ではまだまだ働ける年齢

であると思っているだけに、この事実上窓際という采配はかなりショックだった。

 だいたい、あれがいけなかったのではないかと今になって思う。あの、十数

前に起きたアメリカでの9.11テロだ。あの頃私はまだ勢いがあって、不景

気を吹き飛ばすためには何か大事件でも起きた方がいいのではないかなん

て思っていたら、あの事件が起きたのだ。そして案の定イラク戦争が起きて、

世界の経済が少し動いた。

 あれから十数年も過ぎたのに、景気は一向に回復しない。これじゃだめだ。

類はやり直さなければいけないのでは?そう思っていると、東北地方で大

震災が起きた。まるでノアの方舟時代の大洪水が起きたのだ。こんなこと、私

が積極的に望んだわけでもないのに、悪い方へ悪い方へと考える癖のある

私は、そんな災害を想像してしまったのだ。想像するということと望むという事

は違うのに、私の場合はそうはならないらしい。私が想像したことは、私が望

んだことと同じくらい起きてしまうのだ。不思議なことなのだが。

 自分の落ち込みも、自分が想像してしまったからそうなったのに違いない。

もっとバラ色の未来を想像出来ていたなら、きっと私自身も病気になどならな

かっただろうし、窓際左遷もなかったに違いない。しかし、これは性格だから仕

方がない。私は調子がいい時は前向きになれるのだが、少し調子が崩れると、

どんどん悪いほうへ悪い方へと思考が傾いていく。病気になるのではないか、

病気がもっとひどくなるのではないか、そうしたら働けなくなるのではないか、

誰も心配してくれないのではないか、やがて死んでしまうのではないか。

 世の中の事だってそうだ。不景気が続くのではないか。厭な事故が起きるの

ではないか、災害もくるのではないか、やがて終焉が訪れるのではないか・・・。

そう、私は自信をなくしてしまうと、とことんだめになってしまう性質らしいのだ。

 その頃・・・

天使庁大臣「親神様が、御子息を修行のために地上で人間と交わらせるとおっ

ゃられた時には、それもいいのではないかと思い、賛成させていただきました。

しかし、あれから長い年月が過ぎて、今、御子息は地上で何か善からぬ方向に

傾いておいでです。そろそろ天上に還される時期ではと・・・。」

「ふぅむ。それでは中途半端な。最後まで人間と運命をともにさせてこそ、全能の

神として崇められるようになるのではないかな?もう少し・・・そうじゃな、マヤ暦が

指し示す2012年12の月まで待とうではないか。地上に降りた神・・・あやつの錯

乱によって人類が終わるのか、はたまたノアの方舟の時のように、人類を救うの

かを。

                                了

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