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第七百五十二話 ちかごろの贈り物 [可笑譚]

「チョコレート以外に、何が欲しい?」

 最近のバレンタイン、本命彼氏にはチョコだけじゃなく、普通にプレゼント

をあげるという習慣がスタンダードになってきて、なんだか出費だなぁとは

思いつつも訊ねてみると、アイパッドミニが欲しいと言われた。え? 最近

話題の? そう。あれ、欲しいんだけど、なかなか手が出なくってさ。チョコ

なしでいいから、ああいうのもらったらすっご嬉しい。なあんていわれて、

わたしはすっかりその気になった。だけど、それってどこで売ってるのかな?

なんだか電気屋とかで売ってるらしいけど、インターネットで見てみると、

構高いじゃん。きっともっと安いのがあるはずだと思ってさらに検索すると、

あるじゃない。安くて便利そうなのが。なになに? 

「雨の日に大活躍! もう手放せない、インテリジェンス時代の申し子!」

 って良さそうじゃんこれ。パッケージの見た目は、そのアイパッドなんとか

とそっくりだし、なんかかっこよさそう。雨の日限定なのがちょっと気になる

けど。とにかく、電気屋のサイトで見たものの十分の一くらいのお値段なの

で、ポチッと購入した。二日後届いたものをそのままラッピングして、昨日、

彼の手に。

「えっ? ほんとうに買ってくれたの? アイパッドミニ! うわぁ、軽っ!パ

ケージのままでもえら軽いな。さすがアイパッドミニ!」

 喜ぶ彼の顔を見ながら、あの、その、アイパッドミニって名前では……ちょっ

と言いそびれていたら、バリバリっと包装紙が破られて。なんだこれ? これ

ってアップルじゃないじゃん。パッチもん? 彼の顔がみるみる曇る。

「マイかっぱmino……なにこれ?」

「あのね、雨の日限定。すっごスグレモノらしいよ。その小さなサイズから、

いざとなったらバット広げて、雨を防げる……」

「面白過ぎ……嬉しいよ、お前のそのしゃれっけ。で、チョコは?」

「チョコはいらないっていったじゃない」

「それは……ま、いっか。ありがと、雨合羽。今度使うよ」

「あ。怒った? ね、ね、次はもっといいの見つけてるから。ね、今度は期待

してて」

「ほんとう?」

「うん、もっといいの。えーっとね、ぶるぶる震えて美味しいコーヒーが淹れ

られる、サイフォン・バイブっていう……」

                            了


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