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第七百四十一話 鬼は外 [日常譚]

 昨日は節分。我が家では毎年豆まきをして厄払いをするのだが。今年はどう

いうわけか、会社でも一日遅れの厄払いをしようということになって、あらか

じめ手に入れておいた豆を升に入れて社員に配られた。

「こんな時代だ。我が社でも豆をまいて役を払おうではないか。昨日、私は厄

払い神社でお参りをしてきたから、一日遅れだが皆に配った豆をまいて、厄を

払ってください」

 社長の挨拶の後、みなで一斉に声を上げながら豆をまいた。

 「鬼はー外! 福はぁうち! 鬼はぁー外!」

 全員っ目をまきはじめると、どうしたわけか社長の姿が消えた。さらに豆を

まくと、取締役、部長、課長と、一人ずつ姿を消していく。気がつくと、社内

には誰一人いなくなっていた。社内で豆をまいていたはずの社員全員が社屋の

外に出てしまっていて誰一人として社内に戻るための扉を開くことができなく

なっているのだった。

                         了


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