第六百三十三話 復興予算の使い道 [文学譚]
「課長、たいへんです。こないだの件で皆が騒いでます」
「なに? あの、皆から集めた復興予算で宴会費を払った件で?」
「そうです。そんなことのために払ったんじゃないって、みんな言ってます」
「なんで、そんなことがみんなにバレたんだ?」
「さぁ、それはわかりません」
「と、とにかく部長に収めてもらおう。あのときは部長もいたんだからな」
長引く不況のために傾きかけている社を立て直すために、社員全員から集め
た復興予算という名目のお金。これで営業対策を整えて、会社の景気をよくする
というものだった。だが、その対策委員会会議の後、景気づけにと委員会全員で
飲んで騒いだ費用を、幹事役である課長の采配で復興予算から支払ったのだっ
た。
「なぬ? 復興費用で酒を飲んだ? どういうことだ」
「部長……あのとき、部長個人のボトルキープ代も払っとくようにって、私に
言ったではないですか」
「む。そうだったかな? わかった。私から皆に話そう」
翌日の朝礼で、部長の口から、事実関係の調査をすることと、再発防止に努
めることが社員全員に伝えられた。
「どうだ、これでよかったかな? 今後こういうことをするときには、もっとわから
ないようにしてくれたまえ。表向きは俺が自腹を切ってるように見せかけるとか、
別の封筒に金をいれておくとかだな」
「社長には、伝えなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。社長にはすでに伝えておる。復興予算で購入した美酒を添えてな」
「さすが、部長。冴えてますなぁ」
了