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第六百十九話 外国語のレッスン [妖精譚]

 杏子が外国語学校に通いはじめたという。なんで今さら? と訊ねると、だ

ってグローバル時代の今は外国語のひとつやふたつ、マスターしておいた

方がいいのよと言う。確かにそうなのだが、私たちはすでに英語の基本は

学校で習ったし、現実的にはその英語ですら日常的に使用する場面は少

ないのだから、私にはあまりグローバル時代という実感はないのだが。

 で、何を習ってるの? と聞くと、ヴァヴァロニアン語だと言った。なんだそれ。

どこの国の言葉なのと訊ねると、知らないんだって。でも、今さら英語なんて

必要ないし、フランス語も大学である程度はならったし、今なら中国語かハン

グルだって勧められたけど、それは今みんなやってて、つまんないから。誰も

知らないような語学をやっておけば、この先、通訳だとか翻訳だとか、希少価

値が出るんじゃないかと思ってだって。それにしても、ヴァヴァロニアンって。

いったいどこの言葉なんだ? そんな語学、ほかに誰も学んでいるやつなん

ていないだろうと言うと、そうでもない、同じようなことを考えてる人はいるもの

で、案外人気講座なのだという。

 試しに、どんな言葉なのか、喋ってみて。そう言うと、杏子は口を少しだけ開

いてパクパクさせた。なにそれ? 声が出てないじゃん。ううん、ヴァヴァロニ

アンってこういうものなの。音声というよりは、テレパシーに近いっていうか。

実際には、超高音域の声をだしてるんだけど。人の耳には聞こえないのよ。

なんじゃそれは。それじゃぁ、人間同士では使えないではないかと言うと、

そこよ、そこ。だから私たちは聴力も含めて訓練してるんじゃない、馬鹿ね、

と逆になだめられてしまった。

 それにしても。ヴァヴァロニアンなんて、どこにあるんだ。そんな言語を使

っている外国人を見たこともないが。でも、私が知らないだけなんだろうな。

もしかしたら、アジアの次にはそういう未知の国がブレイクするのかもしれ

ないな。え? なに? 宇宙の言葉? 杏子は突然そう言った。ヴァヴァロ

ニアンというのは、宇宙の種族が使ってるんだって? どこの宇宙よ。それ

はわからない? なんかあんた、騙されてるんじゃないの? 大丈夫なの、

その外国語学校は。でも、私もちょっと興味がわいてきたなぁ、そのヴァヴ

ァロニアン語。ほかにもあるのかなあ、宇宙語って。

                               了

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