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第六百二十七話 ドット病の彼女 [可笑譚]

 衣替えをしていると、昨年買ったドットのコートが出てきた。ああ、これこ

れ、去年流行ってて買ったんだった。可愛いんだよね。私は一旦好きにな

ったら凝ってしまう方なので、去年ドット柄にはまったといには、いろいろな

アイテムを購入したのだ。

 紺地に白い水玉が入ったスカーフを皮切りに、黒地に白ドットのスカート、

ージュ地に紺ドットのパンツ、黒地にベージュドットのスパッツ、黒地に白

ドットのブラウス、そしてこのベージュに白ドットのコート。上から下まで全部

ドット柄でまとめてしまいたいくらい好きだったのだが、それをすると、パジャ

マか道化師のようになってしまう。ドット柄は目立つので、どれかワンアイテ

ムしか使えないのだネックだ。ただ、このコートなら、インナーにドットを入れ

てなおかつドットコートを羽織るという技が可能なのだった。昨年はほんと、

ドットにはまったなぁ。一種の病気だな、これは。ドット病。病名まで思いつい

てしまうと、思わずおかしくなって、うふふと一人で笑ってしまった。

 早速、発掘したコートを着て歩いていると、向こうから友人の女の子が歩い

てきた。ここ数日めっきり秋らしくなったとは言え、日中はまだ暖かかったりす

るので、彼女は軽装だった。ベージュの長袖カットソーの上にTシャツの重ね

着という感じ。

「こんにちは」

「あら、こんにちは! あ、可愛いコート!」

「うん、衣替えしてたら出てきたから・・・・・・」

「ああ、もう、そんな季節ね。それにしても可愛いドット柄!」

「去年は流行ったけど、今年はどうなのかしらね?」

「あら、今年も引き続きだと思うよ。っていうか、ドット柄はテッパンだよね」

 そう言って微笑む彼女もドット柄を身に着けている。白いTシャツの中に着

ているカットソーは、ベージュ地にピンクのドットだ。

「あなたのカットソーも可愛いドットじゃない?」

「え? 私? 私はドット柄のを持ってないの」

「でもほら、そのカットソー」

 よく見ると、彼女はカットソーなんて着ていない。

「えーっと、その腕の柄はぁ……」

「え? 腕?」

 言いながら自分の腕に目をやった彼女の顔色が変わった。

「え! え? な、何これ? なんなのー!」

 両手で腕を抱え込むようにして摩る彼女。掌が腕を押す度に、ピンクのドッ

トが白くなったり、濃くなったりしている。

「じ、じんましんかしら……それとも、何か変な病気かしら?私、今朝からなん

だか身体が熱いと思ってたのよね……。びょ、病院に行くわ、今から」

 身体の変異に気づいた彼女は、急に病人のような表情になって、ふらふらと

歩き去った。ドット病って……本当にあったんだ……。

                                   了


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