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第六百三十話 女子かい? [可笑譚]

 友人のユミコから同窓女子会の話を聞いたので、私も行ってみることにした。

いままで誘われたこともなかったので、はじめての参加なのだが、みんな学生

時代の気のおけない友人だからとても楽しみで、いそいそと出かけた。会場は

カジュアルなイタリアンバル。私が席に着いたときには、もうみんな集まってい

て十人くらいがワイワイはじめていた。

 卒業してからもう十数年が過ぎるけど、みんなほとんど変わっていない。少し

目尻のシワが増えたかなと思える女子が何人かいたけれども、それは私だって

人のことは言えないし。ユミコをはじめ、個々にはときどき会うこともあるのだけ

れども半分くらいは卒業以来の再会じゃないかな。昔の仲間って、なんだか落ち

着く。久々に集まると、まずは近況報告ということになるけれども、五人はもう結

婚していて子供もいるという。子供が小さいから来れなかった人も何人かいる。

結婚もせずに働いている私としては、羨ましいような、そうじゃないような。やっ

ぱり私は自由気ままな暮らしの方が好きだから。

 主には席の近い者同士で近況報告が終わると、今度はダイエットやおしゃれ

の話がテーブルに載せられる。最近体重が気になっているとか、食事ダイエット

を実践している子の話とか、ファッションに関してはやっぱりどの店で買うか、バ

ーゲンはどうだったか、今日のアクセサリーはいくらしたか、みたいなたわいのな

い話であるが、そのうち急に健康の話になった。マユミが自分の体調不良の話を

したからだ。

「最近さぁ、不順なんだよね」

 マユミは独身派だ。

「私、ちょっと早いけど、更年期がはじまったのかも」

「それはないんじゃない? まぁ、早い人もいるらしいけど、それにしても」

「マユミはさぁ、あれじゃない? セックスレス」

「ええー! 確かにこのところオトコがいないんだけど……」

「あれってさ、ご無沙汰しすぎると、ホルモンバランスがおかしくなってくる

らしいよ」

「あ、女性ホルモンは重要だよ! エストロゲンが減っちゃうとさぁ、ほら、

女性にもアンドロゲンって男性ホルモンが最初からあるんだけれど、それ

の割合いが増えちゃうから、いろんなことが起きちゃうよ。急に老けたり、

髭が生えてきたり、そうそう、更年期傷害もその一つだよ」

 そういうことの知識は少々持っているだけに、思わず口を挟んでしまった。

するとみんなが一斉に私の方を見た。さぁ、その話ならなんでも聞いてよ!

というつもりで私はみんなににっこりと笑いかけたんだけど。

「ねぇ、なんであんたがいるのよ」

 幹事役のクミコが口を開いた。

「え? 私……」

「誰が呼んだの? 誰か招待した?」

「あ、ワタシが言ったかも」

 ユミコが申し訳なさそうに言った。

「そっか、ユミコは仲よかったものね。ううん、別にいいんだけど……幹事と

しては、一応声かけて欲しかったなって」

 私は急に居心地が悪くなって言った。

「ねぇ、まずかったかしら? あたしはのけもの?」

「ううん、だからぁ、別に私はいいんだけどね、一応これって普通の同窓会じ

ゃなくって女子会だし……」

「やっぱり?」

「そうねぇ、まぁ、みんながいいっていうなら別にいいけど、ビミョーな話とかも

するじゃない、私たち」

「いまのみたいな?」

「まぁねー。でもあんた、しばらく見ないうちに随分かわったのね。いまのいまま

で私あんたがいるのに気がつかなかったもの」

「ほんとほんと。私も誰だっけって思いながら喋ってた」

「そうかなぁ、私、自分ではそんなに変わってないと思うんだけど

「誰がいちばん変わったかって……」 

 クミコの言葉に続いてみんなが口を揃えて言った。

「あなたがいちばん変わったわ、太郎君!」

                                   了

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