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第八百九十三話 人間を三つにわけると [文学譚]

 川沿いのテラスカフェで爺さんが三人集まって世間話をしている。

「ワシも昔は若かった」

「うん? ぼくはいまでも若いがなぁ……」すると三人目が

「わしゃぁ若い時などなかったわ」

 それを聞いていたのが隣席でお茶をしていた主婦三人組。

「面白いわね、聞いた? いまの」

「聞こえた聞こえた」

「私たちもやってみましょうよ」

「そうねぇ、私は……昔はキレイだったわ」

「あら? 私はいまでもキレイよ」すると三人目が

「私は……一度もキレイな時などなかったわ……」

 そこへ水を注ぎに来たウェイターが口をはさむ。

「お客さん、この店も昔はちょっとくらいは儲かってたんですよ」カウンター横に立っていたアルバイト女子が「あら? いまでも儲かってると思ってたわ、アタシ」すると調理場にいたオーナーが

「なにをいう、いままで一度も儲かったことなどないんだよ、この店は。俺ってお客さんにサービスし過ぎちゃうからね」

  店の表では青い制服を着た駐禁パトロールのおじさんが路駐車にシールを貼りながら話していた。

「本当に、ここは駐禁だっていうのに、ルールを守らないなぁこいつは」

「だけどルールを破る人がいるから俺たち、仕事になるんじゃないの?」

「いやいや、こんなルールを作るからワシら、忙しくなるんじゃがな」

 先ほどから天上界で人々の会話に興味を感じて聞き耳を立てていた存在が、ではわしもひとつと。

「この世にいる人間は三種類……愛を乞う者と、愛を与える者、そして愛を知らない者じゃ」

 もっと上のほう、暗黒の宇宙から地球に向かっていた宇宙船の中では得体の知れない生物が自分たちの言葉で地球人に通達すべき内容を練っていた。

「ワレワレハ侵略者だ。オマエラハ絶滅スルカ、ソレトモ奴隷トナルカ、ドッチダ?」

                                                                              了


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