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第八百三十四話 大型休暇明け [日常譚]

 今年の大型連休は、中三日を挟んで飛び石だったので、いっそ全部休もうと思って、三日間の有給休暇を入れた。そうすると十日間の休暇ということになったのだが……。

 普段は、次の週末までの一週間がとんでもなく長く感じられるのだが、休日となると、一日が終わるのすら早いこと早いこと。昼過ぎまで寝ていたりなどすると、あっという間に夜になってしまう。これが数日間の休みとなると、気がつけばあっという間に一週間は過ぎてしまっているのである。日にち感覚がおかしくなってしまうとは、まるで浦島太郎だなと思うのだ。

今回の大型連休も、はじまる前は十日間もあると大喜びしていたのだが、気がつくと最終日を迎えていた。こんなことならあれもしておけばよかった、これもしておけばよかったなどと後悔してもはじまらないのである。

 最終日の夜になると、翌日から仕事だという現実をなかなか受け止められずに、ああいやだいやだ、会社に行くのはいやだと駄々っ子になり、その反面、明日会社に行けばあれもしなければ、これもしなければといろいろ心配になる。心配になりついでに、もしや間三日間を休んだことで、首にでもなっているのではないだろうか。もしや自席がなくなっているのではないだろうか、会社が倒産してしまっているのではにだろうかなどと余計な妄想が膨らんでしまうのだ。

 果たして翌朝、休み疲れでぎりぎりまで眠ってしまっていて、窓外の鳥の鳴き声に眼を覚まし、飛び起きたのが始業時間の三十分前。慌てて着替えて朝食も取らずに会社に向かった。

 ところが会社に到着してみると、会社はしんと静まりかえって、誰ひとり出社している人間はいない。どうしたことか。ドキドキしながら自席を目指す。幸い自席は休み前のまま存在していたのだが。いったいこれは。もしかしたら、妄想通りに、私が十日間を休んでいるつもりが、実は浦島太郎のように何年も過ぎていたということなのか。あるいは、やはり休みの間に会社は倒産してしまったのではないだろうか。私はデスクに呆然と座って頭を抱えた。そのうち誰かが出社して来ると思って待っているのに、誰ひとり出社してくる様子もない。

 そのうち、扉が開いて誰かが部屋に入ってきた。よかった! ようやく出社してくれた! そう思って扉の方に眼をやると、清掃員だった。清掃員がこちらに気がついて声をかけてきた。

「おやまぁ、もう出社ですか? 世間は今日が緒方連休の最終日だというのに、もうお仕事とは。ご苦労様です」

 私は一日間違っていたのであった。

                                            了


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