第六百六十六話 666は…… [怪奇譚]
いつかこの日が来ると恐れていた。数字を入れている以上、いつか訪れてし
まうのは必至であるとはわかっていたのに。
ついこの間は十一月十一日ということで、ポッキーの日やら、もやしの日や
ら、洋数字にかこつけた賑わいがあったようだが、そういうのなら可愛いもの
だ。だが、この三つの数字は、そんなに可愛いものではない。
666といえばすぐに「獣の数字」という連想をする人は、いまでは随分多
いと聞く。あの恐怖映画オーメンのおかげだ。オーメンでは、身体のどこかに
666という数字が痣のように刻まれた子供がいるという設定で、獣の数字が
刻まれたダミアンが悪魔の申し子であるとわかる。だが、もともとこの三つの
数字は、 新約聖書の「ヨハネの黙示録」の「第13章第18節」に記されていて、
曰く「思慮のある者は獣の数字を解くがよい。それは人間の名を指す数字であ
る。その数字とは666である」となっている。そして、恐ろしい事に、現実
に彼のアドルフ・ヒトラーも、暴君ネロも、その名前を解釈していくと、この
悪魔の数字を含んでいるのだという。つまり、人間の中にこそ、恐ろしきもの
が潜んでいるということなのだろう。
さて、私はというと、もしやこの悪魔の数字が身体のどこかに刻み込まれて
いるのではないだろうかと恐れた。だが、体中どこを探しても、そんな数字は
見当たらない。頭を五分刈りにしてまで探索したが、ついぞ悪魔の数字は発見
できなかった。そのために油断してしまったのかも知れない。まさかいま、こ
の期におよびこんな恐ろしいことが起きようとは。
私は十二分に考えた、考え尽くした挙げ句、ようやく決心をして最後の手を
打った。まさか、この手が思いがけない悪魔を呼び出すことになろうとは思い
もしなかったからだ。私の手からそれが離れたその直後、誰かが叫んだ。
「ローン! 大三元、四暗刻単騎、どらどら!」
あちゃぁ!
了