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第六百五十六話 識別 [空想譚]

 近所の公園を散歩していると、いつもたいてい誰かが愛犬を散歩させてい

る。時間帯によってはそういう人たちが何組もいて、公園はさながら愛犬サー

クルの集会のようになっている。なぜ集会にみえるのかというと、みんなが同

じ種類の犬を連れているからだ。

 最近よく見るのはミニチュアプードルという種類。ミルクチョコレート色が人気

のようで、同じ色をしたミニチュアプードルを連れた人達が一箇所に集まって

仲良くおしゃべりなどしている。

 同じ犬を飼っていても、飼い主は千差万別で、お洒落な人もいれば、そうで

もない人もいる。男も女も、年寄りも若いのも、みんなリードの先には同じ犬が

つながれているのだが、犬の方はといえば、私から見ればみんな同じに見え

る。同じ犬種、同じ色、似たようなサイズであれば、ほとんど見分けがつかな

いのだ。とくにこのミニチュアプードルやミニチュアダックスのような小型犬は。

 一度、テレビで実験をしているのを見たことがある。それは、同じ犬種の飼

い主を集めて、ドッグランに飼い犬を放してしまう。似たような犬が走りまわっ

ている中から、自分の飼い犬w探すことができるかというものだった。あのと

きは、そう、パグだったかな。みんなへチャゲたような顔をして、身体には模

様のないベージュ色の犬。こいつもみんな同じに見える。ところが、飼い主

はちゃんと自分の飼い犬を探し出すことができた。他人から見て似ていて

も、家族として育てている人には、違いがわかるんだろう。

 人間はどうなのだろうと思う。犬種が違えば識別できるように、人間でも

人種が違えば、もちろん識別できる。ところが、同じアジア人だとどうか。

アジア人同士ならわかるが、西洋人から見ると似て見えるのだろう。日本

人だけならどうか。外国人から見ればみんな同じに見えるに違いない。

 だが、同じ日本人同士で見れば、実際にはそっくりな人はそれほど見つ

からない。みんな個性的な顔や身体をしているように思うのだが。思うにこ

れは、様々な種族が雑種交配した結果だと思う。つまり、交配前の純血種

をたどれば、モンゴロイドの純血種、南方系の純血種、アイヌの純血種など、

血が混じらない単一の民族がたとすれば、それはもしかしたら、私にとって

のミニチュアプードルと同じように見分けがつかないのではないか。

 逆にいえば、よく似た顔の人は、元をたどればきっと同じ民族の血を引い

ているに違いない。こう考えて、私は長年、自分とよく似た顔の人を探し続

けてきた。似た感じの人間はたまに見つかる。だが、よく観察すると、決定

的に違うことがあるので、やはりその人は自分の種族の血が混じっている

のかもしれないが、やはり同じ血統とはいえないんだろうなとがっかりして

しまう。決定的な違いは、髪型で判断する。私に似た顔をしていても、頭髪

の生え際が顕にされていれば、ああ、違うなとわかる。なにしろ、生え際を

髪で隠していなければ、きっと人からは恐れられてしまうだろうから。

 もうお分かりかと思うが、私には頭髪の生え際あたりに一対の角がある。

小さな出っ張りではあるが、削ってもまた伸びてくる。これは私の血統を明

らかにする大きな特徴だ。だが、この特徴は日本古来の鬼伝説と符号し

てしまうがために、公にし難いと思っている。もし公にしたとすれば、もは

や私は、そして私と同じ特徴を備えた人間は、もはや人類ではないと阻害

されてしまうに違いないから。鬼族。そう呼ばれるに違いないから。

                          了


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