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第六百五十一話 未来からの警告 [空想譚]

 最初は迷惑メールかと思った。発信元が僕自身のアドレスだったからだ。な

りすましメールとか、そういう類いのいたずらメールだと思えた。しかし、日

付が奇妙なのだ。受け取ったのは昼間の12時10分なのだが、送信時刻は、ちょ

うど12時間後、つまり日付が変わった00時10分になっている。ということは

半日だけ未来から送られて来たということになる。タイトルを見た僕は、直感

的に、これはいたずらメールなどの類いではないなと思った。

FROM:僕自身への警告

待って! 削除しないで。スパムメールじゃないよ。大事な情報だから必ずチ

ェックするように! これは未来の僕自身からいまの僕自身への警告なんだ。

明日、君……つまり未来の僕から見れば過去の僕なんだけれども……に、大変な

ことが起きるんだ。何が起きるのかはわからない。なぜなら今の僕自身も、未

来の僕から警告を受けたわけだから。とにかく、明日、充分注意をして事故や

事件に巻き込まれないように注意をするように、昨日の僕にメールを送るよう

にという内容のメールなんだ。過去の僕にメールをする方法は、下に貼付けて

あるから、そこをクリックして、これと同じ内容を書き込むだけでいいそうだ。

どういうわけだか、メールは一日前にしか遅れないんだそうだ。だから、未来

の僕は一日前の僕にメールをして、さらにその一日前の僕にメールを送るよう

に指示して来たというわけらしい。僕自身も最初は信じられなかってけれども、

熟考した上で、過去の僕にこのメールを転送することに決めた。だから君も、

同じことをして、未来の僕が大変なことにならないように警告を伝えて欲しいん

だ。わかったかい? よろしく頼む。では。

僕は、このメール内容を見て、にわかには信じられなかったんだが、いずれにし

ても気味が悪い。いったい何が起きるというんだ。事故に? それとも事件に?

書いてきた本人、つまり未来の僕にも内容はわからないとある。明日、何が起き

るのだろう。僕は昨日の僕に同じメールで警告するべきなのだろうか? 僕はす

ぐには行動を起こす気にはなれなかった。明日になるまでには、もうすこし時間

がある。よく考えてみなければ。

 警告のことを頭にしっかりと刻み込んで、僕はいまやるべきこと、すなわち仕

事に戻った。それから夕方になるまで、このことをすっかり忘れていたんだが、

夜の11時を過ぎてからようやく思い出した。大変だ。警告メールのことを忘れて

いた。あれはほんとうに未来からの警告なんだろうか? いたずらじゃないのだ

ろうか。しかしメールを一本打つくらいなら、別に支障はないだろう。ほんとう

に信じるかどうかはさておき、とにかく昨日の僕にも知らせておくべきに違いな

い。もしも、ということもあるからな。

 僕は、昼間来た僕自身からと賞するメールにもう一度目を通し、もう一度よく

考えた上で、メールに貼付けられている過去に送ることができる方法が書かれて

いるURLをクリックした。そして、昼間着信した警告メールの内容をコピーして

過去の自分へのメールのところに貼付けて送信した。危なかった。もう少しで忘

れてしまうところだった。僕が過去の僕に警告を送らなかったせいで、未来の僕

に何かが起きては大変だ。真実なのだかどうだか、ほんとうのところは、なんだ

かよくわからないが、これで、僕の役割は終えたぞ。僕はもうこのことは忘れて

しまおうと思った。

 時刻は日付が変わった00時10分を過ぎていた。

                         了


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