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第六百五十三話 答え [文学譚]

 人生の狭間で何かに迷ったとき、どうしていいかわからなくなったとき、人
はどうやって答えを見つけているのだろう。親に相談する? もう親は亡くな
っているので、妻や夫に話す。結婚していない? だったら恋人か、友人に話
してみる。それともラジオの人生相談番組に電話をかける。占い小屋の扉を
ノックする。まぁ、答の見つけ方は、人それぞれでいいのだけれど、人に話
して答えは見つかるのだろうか。
 そう、私の場合は、誰かに話して答えが見つかったことは一度もない。話し
た相手は、何かしらアドバイスをしてくれるだろう。だが、たいていの場合、
結局、答えは自分で見つけなきゃね、なんて結論を言い渡して終わるのではな
いかな。反対に私が誰かから相談されたとすれば、間違いなく自分で答えを見
つけなければならないと告げるだろう。それに、人のアドバイスを聞いている
うちに、その人の意見そのものではなく、自分自身で答えのようなものが見え
てくるものだ。結局、答えは自分の中にある。
 答えは自分の中にあるのに、それがわからないから、人に聞いてもらいたくな
るのだが、人に話してああしろこうしろと言われても、決してその人の言うと
おりにはしない。自分の中にある答えを見つけ出してそれに従うという矛盾。
それなら最初から自分自身で考えればいいのに。だけど自分自身と対話するこ
とが難しいから、また誰かに相談する。……なんかおかしいだろう? なら、
いったいどうしたらいいんだ? 悩む。悩んで悩んで、うーん、どうすればいい
のか誰か教えて!
 自分自身と対峙するいい方法を教えよう。それは、眠ることだ。ふかふかの
布団を用意して、ゆっくりした気持ちでベッドに入る。静かに、心を落ち着け
て。好みの枕の上に頭を乗せて目をつぶる。眠気がきたか? おっと、その前
に一つだけ忘れてはいけない。悩みを訊ねるのだ、自分自身の夢に。眠る前に、
答えを求めている悩みについて自分自身にもう一度問うのだ。「いったい私は
どうすればいいのか」と。すると、夢が答えてくれる。夢の中で、悩みに対す
る答えが見つかる。これは何も神秘的な方法ではない。自分自身と真摯に対峙
できる有効な方法なのだ。私自身もこのやり方を、祖父から教わった。一度試
してみればいい。だが。
 どうすればいい? どうすればこの悩みは解決するのだろう。どうすれば答え
が見つかるのだろう。 ベッドに入って、眠りにつき、夢で答えを見つけたいの
だけれども、それができないでいる。いまの私の悩みは、眠れないことなのだ。
                                                          了

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