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第七百七話 お年賀 [文学譚]

  新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

 おお、来てる来てる。やはり、何かが届くというものはなんだかうれしい。

毎年年が開けるとそうやってポストを覗きこんでしまうのは、私だけではない
だろう。
  毎年元旦にポストに届く年賀状は、単なる慣習にしか過ぎず、それほど意味
のあるものとは思えないのだが。子供の頃には何も考えずに年末になると年賀
状を何枚も書いた。大人になってからも、社会の新参者としては年上の人たち
に、ついでに友人たちに、一生懸命書いていた。それがある時突然煩わしくな
って書くのをやめた。だいたいほとんどが松ノ内が開けたら会社で会う人たち
ばかりなのだし、その時におめでとうございますと言えばいいわけだし、そう
ではない人に対しては、正月にだけやり取りをするというのも妙なものだと思
うのだ。親交を深めていたいのなら、正月に限らずもっと普段から手紙でも出
すべきだと思うのだ。
 年賀状というものは実におかしなもので、一年前に受け取った年賀状を見なが
ら書くので、まるで一年ぶりの返事を書いているような感じになってしまうの
だが、相手も同じように一年前に送った私の年賀状を見ながら書いてくるのだ
ろう、今年私が書くのをやめても、向こうからは届くのだ。すると、結構義理
堅い私としては、結局年を明けて年賀状を受け取ってから、その返信として年
賀状を書くことになる。
 こうして、結局私はまた年賀状を書くという習慣をいつまでも止めることが
出来なかった。だが、今年こそ、この悪習を断ち切ろう、そう決心したのが
年末。実のところ、だんだん面倒臭くなってきたというのがほんとうの理由
なのだが、今回はハガキも用意しなかった。年始にポストも覗かない・・・・・・
と思っていたが、それは出来なかった。つい、ポストが気になって、誰かか
ら年賀状が届いてないか確認してしまうのだ。だが、ポストには何も入って
いない。
  おかしいな、毎年何通かは来るはずなのに。これはどうしたことか。年賀
を受け取っても、今年は悪習を断ち切るために返事は書かないと決めた。書
かないと決めたから年賀ハガキも買っていない。しかし、一枚も年賀状が届
かなければ、返事を書かないという決意を実行することが出来ないではない
か。来てもいない年賀状に返事は書けないし、書けない年賀状は、それを止
めることが出来ないという、この矛盾。困った。決意が揺らぐ。
 私は年明け早々から、何度も何度もポストを覗きに玄関に行っては戻りを
もう何度も繰り返している。
           了


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