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第七百二十五話 スマートフォン水没 [文学譚]

 以前、いわゆるガラケー、つまり二つ折の携帯電話を持っていた頃、胸のポ

ケットなんかにぽそっと入れていたりしてたら、トイレで上半身をかがめたとき

に便器の中にぼっちゃんということがたまにあった。それ以来、携帯電話に鎖

状のストラップをつけて、腰のベルト通しなんかにつないで落ちないように気を

つけていた。だが、その後、携帯電話はスマートフォンに変わり、胸のポケット

に入れるには大きすぎて、バッグやポーチに入れるようになるとともに、便器

に落とすということはなくなった。考えてみれば、小さからこそあんなことになっ

ていたのだなぁと思う。

 スマートフォンは、片手でがっちり持つほどの大きさなので、トイレに持って行

く時も、気軽にポケットなどには入れず、しっかrと手に持ち、トイレの中では棚

の上に預けていたりする。だから今度は忘れてしまう可能性が高いのだ。しか

しまぁ、どういうわけか、今はわたしにとってスマートフォンはいちばんのお友達

で、何をするにも一緒だし、大事なものだし、忘れるということもなく平穏無事に

つきあっているのだが……。

 ところがいまになって、大変なことになっている。大事なスマートフォンが、お友

達のスマートフォンが水浸しになっているのだ。なんでこんなことになったのか、

よく思い出せない。気がつけば水が溢れ、手に持っていたはずのスマートフォン

が目の前にぷかぷか浮いているではないか。慌てて水から引き上げて、表面を

拭いて中の水を振り払おうとしてふと思い出した。

 水没したスマートフォンを振ってはいけない。

 以前ネットで見た「水没時の注意」にそう書いてあったのを思い出したのだ。誰

でも、中の水を振り飛ばそうと振り回してしまうらしいが、それをすると、水分がよ

り奥の方に入ってしまうらしい。次に、電源を入れようとした。だが、うんともすん

とも言わない。同時にこれも思い出した。

 決して電源を入れたり、コンセントにつながな行こと。これをすると、中身が錆つ

いて、深刻な譲許になってしまう。

 ああーよかった。電源、入らないんだもの。それに……この状況ではコンセント

になんてとても繋げない。ほんとうはSIMカードを外して、スマートフォンをジップ

ロックにシリカゲルと共に入れて、適度な温度のところで乾燥させ続けるのだそ

うだ。一説には、生米と一緒に袋に入れておけばいいという話もあるのだそうだ。

だがいま、ここではそのどちらもできそうにないな。わたしはそう思いながら一面

海のようになった街を眺めた。突然やってきた地震と津波のおかげで、大阪の

大部分が水没してしまっているのだ。

                                  了


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