SSブログ

第七百九話 大当たり [妖精譚]

第七百九話 大当たり

 あんな、昨日や。元旦の夜や。ええ夢見たわ。こんな不況の中で何するねん

っちゅう夢やで。どんな夢かって? ふふ。言いたいなぁ。言いたいけど、こ

れ、正夢かもしらんしなぁ。正夢って人に言うてしまうたら、ほんまにならへ

んとか言わへん? ほら、逆に怖い夢見たら人に話したら大丈夫やとか言うや

ん。え? そんなことはない? ほんまかいな。嘘ついてぼくの正夢つぶすつ

もりとちゃうやろなぁ。ほんまにほんま? 言うても大丈夫なん? 絶対やな?

ほな、言おか。……ああ、もうちょっとで言うてしまうところやった。え? 

もったいぶるな、たかが夢やないかて? 阿呆言うな。これ、正夢に違いない

ねんで。もしほんまに人に言うたら現実にならへんのやったらどないするねん。

大丈夫て? ほんまにほんまに大丈夫なん? わかった。僕も男や。ここは腹

を据えて言うたろやないか。あのな……ああ〜もうちょっとで言うてしまうとこ

やった。え?早う言えてか? ほんまにほんまにほんまに大丈夫なにゃろうな。

太鼓判押しといてくれるか。絶対現実になるて。なんやて、そんなん知らんが

なて? そんな無責任な。あんたが大丈夫や言うから言うたんやんか。え? 

まだ言うてないて? あ、こりゃ失礼つかまつった。

 ほな、ほんまに言うでぇ。あのな、ああ〜もうちょっとで……もうええてか?

そんなん言わんと聞いてえね。あのなあのな、年末にジャンボ宝くじ買うたん

や。一万円。ほれ、六億とか言うとったやつ。あ、これはほんまに買うたんや。

夢と違うて。そんでな、その宝くじが当たってしまうんやなぁこれが。毒に当

たったんちゃうかて? 違います。宝くじが当たるんです。ええ? そら決まっ

てるやん、前後賞合せて六億や。大きいで。ところがやなぁ、換金しに言った

らな、細かいのんしかないて言いよんねん。それでもええからくれ言うたらな、

十円玉でええか。そやなかったら渡されへん言いよんねん。そんなもん、もら

われなんだらえらいこっちゃ。なんでもええからくれ言うた。そうしたら、頭

の上からじゃらじゃらじゃら! そりゃあ、もう少しで十円玉で生き埋めにな

ってしまうところやったわ。うわぁい、助けてくれ! 叫んだら、目が覚めよ

った。どや、これは正夢か? 知らんて? そんな殺生な。せっかく気持ちよ

う話したのに。え? 関係ないてか。そんな無責任な。

 これ、正夢やったらどないしよ。六億はいるんだけが正夢で、生き埋めにな

るとこは嘘夢ちゅうことにはならにゃろか? え? ならん? なんでえな。

ぜひ、そのようにしてくれたまへ。なにしろ初夢の正夢やからな。何? 初夢

と違う? そやかて元旦の夜見たんやで。年越して最初に見た夢やで。違う?

初夢は、二日の晩に見るのが初夢て? ということは、ゆんべかいな。しもた。

ゆんべは酒飲み過ぎて寝たから、ぐっすりで、夢もなんも見なんだわ。えらい

ことした。せやけど、初夢やのうても正夢は正夢やろ? 六億円! 違うのん?

初夢やなかったら正夢にはしたらへんって? なんちゅうこと言うねん、それは。

せっかく見た夢や。なんとか正夢にして……あ、生き埋めの常葉嘘夢で。なぁ、

ええやろ? 水臭いこと言わずに。わかったって? そう、よかった。さっそく、

宝くじが当たってるかどうか調べてみいって? そうやな、それがええな……あれ?

どこやったかな。たしかここのとこに仕舞といたはずやが。おかしいな。宝くじが

あらへん。あんた、取らへんかったか? そんなことはないてか。そやなぁ。あん

たがそんなわるいことするわけないし。あれぁ? もしかして宝くじ買うたんも夢

やったんやろか。おかしいな。確かに現実に買うたはずやが。一万円払たし。ちょ

っと家帰って探してくるわ。ほな、さいなら……気いつけえって何に? え? 外出

たらあぶない? 山崩れ? どこが。そこが? 嘘。え? あ、ああ、ああああ〜!

なんか崩れてきよったぁ! た、助けてくれぇ〜う、う、う。苦しい〜うーん。うー

ん、うーん……

 

  あんな、おかしな夢みたで、昨日や。元旦の夜や。なんかええ夢やったような、悪

い夢やったような……悪い夢は人に話したら正夢にはならんっていうけど、ほんまか?

                           了

 

 


読んだよ!オモロー(^o^)(4)  感想(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。