第七百十四話 しまった! [文学譚]
年末年始をのほほんと過ごしてしまったので、あたまの中はほぼ空っぽ状態。
今日になってようやく目が覚めたような感じになって、パソコンの前に座る。この
数日間、実になにも書いていないのである。毎日、少しづつでもいいから書かね
ばと思いつつ、家にこもるというのはほんとうに心が萎えてしまう。年末に少しシ
ョートショートらしきものを書いた書いたっきりで、年始はほとんどテレビの前。別
に何をするというわけでもないのに、無為な時間を過ごしてしまった。
年末は忘年会らしきものはひとつもなかった。ひとつだけあったのだけれども、
億劫になって欠席した。だから、年忘れというものもしなかった感じで、つまりは
去年のことは嫌なこともいいことも、なにひとつ忘れていないのだが……。
今日になってパソコンの前でなにか短い物語を書こうとしてはたと困ってしまっ
た。指がぴくりとも動かないのだ。指がというか、あたまがというか、なにひとつ物
語にするべきなにかが生まれてこないのだ。そこまでのほほんとしてしまったのか?
わたしのあたまはすっかり正月ボケになってしまっているのか? しばらく悩んだ
挙句、はたと気がついた。忘れてきてしまったのだ。去年のことはなにひとつ忘れて
いないというのに、物語をつくるために一年がかりであたためてきたもの、そう、物
語の元になるネタを二千十二年に忘れてきてしまった。しまった! これでは新しい
お話がつくれない。これはたいへんなことになった。どうすればいいのだ。まだ三百
話ほどを書かなければならないのに。私はパソコンの前で頭を抱え込んでしまった。
了