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第七百二十二話 システム・エラー [文学譚]

第七百二十二話 システム・エラー

 新しいものが苦手。そう、たとえばみんながもってる携帯電話とか、そうい

うの。長い間、持たないようにしていたのだけれども、仕事をする上でもった

ほうがいいって言われてもつようになって十年近くすぎた。こっちからはあま

りかけないでいたら、案外使うことはないものだ。それでもたまにかかってき

た電話に気がつかなかったり、メールの仕方がわからなかったり、そのたびに

だれかに訊ねて迷惑かけてしまう。わたしは現代文明に乗り遅れた猿と同じだ

なんておもってしまう。

 そんなわたしがこんどはパソコンというものを買わねばならなくなったのが

三年前。これも、会社でぼちぼちとつかわされていたのだけれども、仕事を家

に持ち帰らなければならないような仕組みができてしまって、否応無しに購入

した。携帯電話でさえ四苦八苦しているのに、それよりももっと大きなこんな

機械、いったいどうしたものかと悩んでいたが、メールやインターネットに使

っているうちに、すこしずつなれて来たから我ながら驚いた。三年目にして、

音楽を聴いたり、デジカメ写真を取り込んだり、なかなか上出来に使えるよう

になったぞ、そう思っていたら、急にパソコンの調子がおかしくなった。画面

上に「システムエラー」という言葉が出てきて動かなくなってしまった。

 翌日会社の同僚に、リカバリー・ソフトという便利なものが内蔵されている

と教えられた通りにパソコンとの格闘にとりくんだ。すると、「ハードディス

クの初期化と再インストール」なんていう難しいことをパソコンから指示され

たのだが、表示通りに進めていったら、なんとかなった。システムというもの

を一からやり直すことによって、元どおりに動くようになったのだ。だが、そ

れまで三年かかって取り込んだ音楽や映像、写真、書類などがすべて消えてし

まっていて、幸い別のハードディスクにバックアップをとっていたから、そこ

から再度取り込み直さなければならず、それはそれで大変な作業となった。

 性格的にすべて元どおりに再現したい質だから、三日も四日もかかって、よ

うやく元どおりに近い状態まで復旧できたときには一週間が経っていた。

 何とか元どおりになって一週間後。またしてもシステムエラー。お店に持っ

ていって調べてもらったが、機械は何ともないらしい。再びハードディスク

の初期化と再インストールを勧められ、前と同じ作業をおこなった。一週間

かけて復旧できたが、そのはんつきご、またしても同じことが起きた。どう

やら何かのアプリケーションが悪さをしてシステムエラーを起こしてしまう

らしいことがわかってきた。

 もはや頭を抱えながら、もう一度同じ作業を繰り返す。繰り返す。繰り、

繰り、繰り返す返す、かえかえかえ返すかえすえすえすえす。くりかりか

りかりかえすえす。ピー〜ーーーーーシステムエラーが起こりましたーー。

                                                           了


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