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第五百八十五話 外部ストレージ [空想譚]

 記憶とは、人が人として存在し続けるための重要な機能だ。”記憶障害”と

いう病が、昨今のドラマのモチーフとされるのも、もし、記憶に障害が起きたら、

人間としての尊厳はどうなるのだろう、という実存に対して直球を投げかける

ことができるテーマだからだろう。私たちは、昨日の記憶があってこその、今日

 の自分であり続けることができるのだ。

 同様に、様々なメカニズムにおいても、記憶機能というものは重要だ。一定の

温度を持続し続ける冷蔵庫や空調機器、映像や音響機器におけるコンテンツの

保存、とりわけパソコンや通信機器においては、様々なデータを蓄積できること

がかなり重要な地位を占めているといえるのではありませんか?

 パソコンで作業したデータを抜かりなく保存するために、携帯電話では通信相

手のデータをきちんと整理して保管するために、モバイル機器では映像や音楽

を外出時にも持ち歩くために。内蔵されている保存容量では不足してしまう事態

に備えて、外部ストレージ、すなわち外付けもしくは本体に差込むメモリーカード

よって補完できるようになって久しい。最近ではさらにクラウドなどという雲の

にストレージをおいてしまおうなんて方法も進化してきた。

 このような、内部ストレージだけでは不足するという前提で、差込式のメモリー

カードが差し込めるかどうかというのも必要不可欠な機能になっていて、またそ

のメモリーカード自身もどんどん保存容量を増やす方向で進化している。つまり、

これは保存すべきデータも、どんどん増え続けているということにほかならない

のではないかな? だから、このメモリーカードが読めなくなるなどという故障が

起きてしまったら、いきなりとんでもなく不便なことになってしまう、そうだろう? 

今、僕が手にしているスマートフォンだって、音楽や電話帳を差込式のメモリー

カードに入れているものだから、こいつに不具合が起きてしまうと、もはや電話

もかけられないなんてことになってしまう。わかる? で、実は、今、まさにそれ

が起きているんだ。僕は、こういう仕組みについてはわかっているが、実際故

障を直せといわれても、皆目技術のことはわからなくて困る。それこそ、そのよ

うな記憶はぼくの中に保存されていないのだからね。そこで、君にぜひお願い

したいことがあるんだ。僕のメモリーカードがどうなっているか、見て欲しいんだ。

それで、できれば修理して欲しんだがね、君ならできるだろう? え? スマート

ホンを貸してみろって? なんで? なんで僕のスマートホンを? 直せるか見て

くれるって? そう、ありがとう。だけど、スマートホンじゃないよ。ほら、僕の後ろ

に回って。そうそう。頭の後ろ、首の辺りにスロットがあるだろう。そこに差し込ん

でいるのが僕のメモリーカードだ。そっと抜いてくれよ。それ、抜いてる間、僕は

随分馬鹿になると思うからね、修理したらすぐに、下に戻してくれよ、頼んだよ。

君だけが頼りだからね。

 すこん。

                                   了

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