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第五百八十六話 コンテスト [日常譚]

 小学校の健康優良児表彰以来、三十歳を過ぎたいままで、表彰されたという

ことが一度もない。日々真面目に一生懸命に生きているつもりなのだが、一生

懸命に生きれば生きるほど、誰かに褒めて欲しくなるものだ。ところが、会社の

上役たちは自分のことに一生懸命だし、私自身も、一生懸命働いているとはい

うものの、褒められるような業績を上げたわけでもないし、褒めていただく材料

は何一つないのだから仕方がない。

 そこで、仕事じゃない何かで表彰されればいいと考えるようになった。世の中

を探せば、コンテストというものが結構たくさんあるんだ。でも、ノーベル賞やア

カデミー賞なんていうものに手が届くはずもなく、私にもできそうなものはない

かと探してみたら、なんとかなりそうなものがいくつかあった。

 最初に応募したのは、交通標語コンテスト。一ヶ月間一生懸命に考えて応募

したのがこの標語。

「赤信号、みんなでわたってもイケナイよ」

 昔、お笑いの人が言ってたギャグを裏返しただけだけど、これはそのまま言え

てるんじゃないかと、自信を持って応募した。・・・・・・だけど、まったく評価はされ

なかったのだ。一等賞じゃなくてもいいが、入賞くらいするだろうと思っていたの

に。

 まぁ、最初は仕方がないかと気を取り直して、次に見つけたのが、サラリーマン

川柳。

なまけもの 部長の前だけ 汗をかき

 日頃嫌な奴と思っている同僚のことを詠んだのだが、リアルなネタなので、当然

合格すると思っていたのに、遂になんの知らせも来なかった。それからというもの、

私は毎日のようにコンテストを探しては応募し続けた。全日本落書きコンテスト、

震災応援歌コンテスト、使い捨てカメラ写真コンテスト、ご近所悪口コンテスト、恥

かきコンテスト・・・・・・自分にもできそうな内容のものに限るが、ありとあらゆるジ

ャンルのコンテストに応募したが、全滅。そして、諦めかけた時に見つけたのが、

今回応募したもの。これが最後だとのぞみをかけて一生懸命セルフポートレート

を撮影して応募したのだが・・・・・・やっぱりこれもダメだったようだ。がっくり。これ

でダメだったら、もはや私にできることなんてない。上には上がいるってことだなぁ。

 私は、がっかりしながら、応募要項が記載されたチラシと屈みを交互に眺めた。

鏡に映ったヒラメみたいな顔の私がひとりごちる。コンテストのタイトルからして、私

にぴったりだと、必ず勝てると思ったのだけどなぁ・・・・・・

「ブサイク人間変顔自慢コンテスト」

                              了

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