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第八百十四話 ダイレクトメールにご用心 [文学譚]

 毎日、家のポストになにかしら入っている。不動産チラシが多いが、企業からのダイレクトメールもけっこう届いている。どこでどうやってうちの住所を入手するのかなと思うが、よく考えてみるとたいて自分から招いているのだ。

 ダイレクトメールの多くは通販ショップからのもの。これは一度ネット通販で購入して品物を送ってもらうと顧客リストに載せられてしまうから、セールがあるたびに案内DMが届く。ネットでDMは不要であるという設定をすれば届かなくなるのかもしれないが、セール情報を逃すかもしれないという気持ちと面倒くさいという思いが働いて、結局そのままになっている。

 そのほかにも銀行、保険会社、クレジット会社、自動車販売、ネイルサロン、りラグゼーション店、百貨店などなど、ありとあらゆるところから発送されてくるのだから、これはもう毎日なにかしらのDMが届くということになって当然なのである。銀行からのはローン金利が下がったとか、契約中のファンドの動きがどうなっているかとかの非常に有用な情報だから仕方がない。最近増えたのは、掛け捨て保険の案内で、無料で一年間の補償が受けられるというものだ。これはお金を払えばさらに有利な補償が受けられますよと加入意思がくすぐられる。さらにクレジット会社のは、いま新しくカードを作ると、お買い物ポイント五百点もらえますよ、というようなもの。五百点って、つまり五百円分。このポイントのために年会費を払うかなぁと思うのだが、つい弾みで加入してしまう人もいるのだろう。

 とにかくこんな具合にDMが届くものだから、食卓の上にはすぐにDMの山ができてしまう。最初の頃はいちいち封を開いてチェックしてから捨てていたのだが、最近では面倒になってあとから見るつもりで置いたままになっているものだから、ついに中身を見ないまままとめてゴミ箱行きになっている。

 これではいけないなと思うけれども、向こうから勝手に送られてくるのだからどうしようもない。ほかのみんなはこういうのをどう処理しているのかなぁと思いながら、一週間分ほどを中身も見ずにまとめて捨てるということを続けている。

 昨日、見知らぬ番号から携帯電話に一報が入った。

平素は私どものお車をご愛用いただきありがとございます」

 どうやら自動車販売会社のセールスらしい。まだ車は乗り換えないぞと考えながら話を聞いてみると、なにかを送ったけれども受け取りましたかという。

「私どもの周年記念懸賞にご応募いただきありがとうございました。抽選で見事当選されましたので、賞金小切手を簡易書留でお送りいたしました」

「え、賞金? 小切手?」

「はい、さようでございます。小切手はお店もしくは最寄りの銀行でお引換できます。どうあそれまで大切に保管してくださいませ」

 そういえば、この会社からのDMを郵便局員から受け取ったような気がする。あれはどうしたっけ。食卓の上にほかのDMと一緒に積み重ねて

「で、私が当選した金額って?」

「うふふ、特賞でございますから、私どものクルマが買えますよぜひ、その賞金を使ってお車の買い替えを」

 私はクルマ一台を、ゴミ箱に捨ててしまったらしい。

                              了


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