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第七百九十九話 ゲームの世界 [文学譚]

 スマホの無料アプリに手を出したのがまずかった。いままでスマホのアプリストアにはたいしたゲームはないと思って相手にしていなかったのだが、なにかの表紙についダウンロードしてついでに”お試し”してみたのがこのクラッシュ・ワールドという名のロールプレイングゲームだ。

 ずいぶん以前のテレビゲームにあったのと少し似ている。都市をつくるシムなんとかっていうゲームや、アースなんとかっていうのもあったかな。要は、プレイヤーが神の位置にいて、ゲームの中の住人たちが街をつくったり、領土を広げていくのを助けるっていうタイプのゲームだ。あの頃のソフトもすごかったように記憶しているけれども、いまここにあるクラッシュ・ワールドは、さらに進化している。ゲームの中の人がどんどん街を広げていくし、資源や資金がなくなったら他国に攻め込んで略奪してくるのだ。プレイヤーはほとんど何もしない。ただ攻め込んでいく他国を選び、略奪した資金を兵力に費やすのか、農業や産業に費やすのかを選ぶだけなのだ。

 これで果たしてロールプレイングゲームといえるのかどうかわからないが、それにほとんど何もしないゲームって面白いのかって思われそうだけど、これが結構はまってしまったのだ。何もしなといっても、住人たちがせっせっ、せっせと働くので、次に攻めていく場所を急いで探さなければならないし、得た資金でどんな市民を増やすのかという選択も難しい。それに彼らの動きを、そして彼らの手によってどんどん変貌していく領土を眺めているだけでもこころを奪われてしまうのだ。

 レベルが10にあがったタイミングで、画面の雰囲気が大きく変わった。それまでの農業を中心とした土着な雰囲気が、工業を中心としたメカニックなものに変わった。どうやらゲームの中で産業革命が起こったらしい。よく見ると、市民の中にパソコンらしきものを動かしている者が現れた。クリックして拡大すると、どうやら彼は都市開発デザイナーのようだった。彼が持つ小さなパソコンの中には、どこかの街の様子が3Dで描かれているようなのだ。彼はその画面を見ながらパソコンを操っている。こいつは何者なのか。ぼくはこいつを操ることができるのだろうか。どうやって? スマホの画面に現れている彼のパソコンを指でつつこうとするが、画面が小さいので僕の指は彼の背中にあたってしまう。

 何度か苦労してこの小さな友達の背中を指でつついているうちに違和感を持った。夢中になっていて気がつかなかったが、さっきからなにか大きなモノががぼくの背中をなんどもつついているようなのだ。

                                        了


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