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第八百七話 幸福になる出会い [空想譚]

 角を曲がると、いきなり変なやつと出くわした。くるくる回るアンテナをつけた銀色の奇妙な帽子をかぶったそいつは、片手を上げて「やあ!」とあいさつをした。どう見ても普通のおじさんにしか見えない小柄な男が、ニコニコ愛想を振りまきながら言った。

「ワタシハ宇宙人ダ」

「な、なんです?」

「アナタハコノ惑星ノ代表者カ?」

「だ、代表者? アタイがぁ。そんなものであるわけないじゃない」

 この突然出現した奇妙な人物に女子高帰りのアタイは少し興味を持った。

「ねぇねぇ、おじさんは外国の人?」

「外国……イヤ、ワタシは宇宙人ダ」

「ウチュウジン? それってどのあたりぃ? 海の向こうなの?」

「ソウダ。宇宙ノ暗黒ノ海ノ彼方ダ」

「で?」

「デ? ……ワタシハ地球人全員を幸福ニスルタメニ我々ガ有スル全テノテクノロジーを伝播スルタメニヤッテキタノダ」

「なぁにー難しそう。テクノロジー? 伝播? アタイたち、そんなのいらないわ。うん、間に合ってる」

「イラナイ? 何故ダ。幸福二ナリタクナイノカ?」

「幸福ぅ? なりたいってか、アタイはもう充分に幸福だけどぉ? おじさん、そういうの趣味でやってるの?」

「シュ、趣味? イヤソウデハナイ、コレハ宇宙ノ使命ダ」

「そっかぁー大変だね、おじさんっていうのも」

「……オマエタチノ代表ハ誰ダ?」

「代表? 誰だろう……ああガッコで影番やってる亜美かなぁ?」

「影番……亜美? 連レテ来レルカ?」

「うーん、急には無理ね。だいたいもう間に合ってるし」

「間二合ッテル……」

「そうよー。また今度会ったら紹介するわ」

「ソウカ。間二合ッテルノカ。地球人ハ案外進化シテイルトイウワケカ」

「じゃね!」

 アタイは数歩離れてから、おじさんのことが気になって振り返ってみると、もうそこには誰もいなかった。

                                            了


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