第九百八十話 おしゃべりな男 [文学譚]
〜昨日のドラマなんかで盛り上がるってるようだけど、俺はそんなもの見ないね。「メメント」と「時計仕掛けのオレンジ」の二本も映画見てたね。すごいだろ。
〜書類選考通った。これで二社目。どっちも次は一次面接。一次は大丈夫、自身があるもん。
〜クリストファー・ノーランの演出もハードだが、ガイ・ピアースは相変わらずなかなかシブい。この人がドラッグ・クィーンも演じたなんて、信じられんな。
〜やりぃ。応募作品が一次通過だって! 一次通ったのは初めてじゃないけど、次の知らせが楽しみだわー絶対二次もいけそうな気がするわ。
〜自画自賛な呟きって……どうよ。ま、呟きだから勝手だけどねー。
〜キューブリックはやはり天才だな。四十年以上も前の映画とは思えんな。ナッドサッド言葉というのも当時は新しかったんだろうな。
〜情報としてはいいんだろうけど、おめえの知ったかな感想などいらねえっちゅうの。
〜うーん。気になるなぁ。早く結果がほしいーっ。こんなの生殺しだわ。応募も会社もって、欲張りすぎ?
〜嫌われるtweetってあるよなぁーそうそ、自分大好きオーラ出しまくりってやつ。
〜メメントみたいな逆転構成は、小説でもあるが、映像だと想像力より先に視覚に入ってくる分だけ混乱しちゃうんだよな。うん、ああいうのは文字の方が適切だな。
〜いよいよ二次の結果が近い。ワクワクとドキドキが同時に来てる。助けてー
〜知らんがな、こいつ。悪い結果だったらどーすんの?
〜海外ドラマのタッチ、セカンドシーズンが始まるらしいが、あれは設定だけだな。いや、展開もうまくできてるが、どうもご都合主義が鼻につくな。見なくてもいいかな。
〜知らんがな。見たくないなら見るな。
〜そういや、あの女。その後の報告がないが。二次はどうなった? 面接は?
なんか気になってつい見てしまうんだけど、どうでもいい人の呟き。見たら見たでムカついてくるし。ぼくにはなにもつぶやきたいことなんてないし、自慢話もないし。愚痴をつぶやくなんてサイテーだし。だいたい、こんなどうでもいいことばっかしゃべるおとこって、つまらんな。あ、いや。男に限らんか。女だって。でも可愛い女の子なら愚痴でもなんでも聞いてやるがな。あいつらの呟きって、いちいちつっかかりたくなるのはなんでだ。そんなことしたら炎上しそうだな。あるいはブロックされる? アカウントいっぱい作って嫌がらせしたろうかな。いやいや、俺って暇人か? うーん、もう見に行くのやめた。そうきめた。
どうなったかな、あいつら。ちょっとだけ見て……。
了