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第六百七十一話 惑星二ビル [空想譚]

 その名前を耳にしたのは、もう随分以前になる。テレビ番組で特集されてい

たのだが、太陽系には、水金地火木土天海冥という九つの内惑星の外側に、

もう一つ謎の惑星が存在するらしいという話だった。しかも、その十個目の惑

星は、九つの惑星が好転するような通常の起動ではなく、並外れた楕円形を

描いて太陽の周りを三千六百年周期で回っているという。そして、その惑星が

今年から来年にかけて太陽系の中心に戻ってきているというのだ。ただ戻って

くるだけならいいのだが、その起動を予測すると、地球めがけて、つまり接触

もしくは衝突する可能性を大いに秘めた状態で接近しているという。

 このような話は三十年前の1982年から噂されており、多くの科学者が謎の

解明に取り組んできたという。そしてなによりも恐怖を感じるのは、それらが公

式には発表されておらず、逆に公表しようとした科学者たちが相次いで頓死し

てしまっているという事実だ。なぜだかわからない。しかし、考えられるのは、

誰かが惑星の真実を隠蔽しようとしているのではないかという疑いだ。

 日本でも、私が見た番組などで紹介されていて、全国に恐怖を示したにも

かかわらず、その後、誰もこのことに触れようとしないし、第十惑星の恐怖は、

現在どこにも流布されていない。僅かにネット上で残存アーカイブとして残さ

れているだけだ。いったい、これはどういうことなのだろう。なぜ、隠蔽されな

ければならないのだろう。

 番組では2012年末には惑星が到着するようなことを行っていたのだが、

webで見つけた記事によると、2013年の二月末頃だという。どちらにしても

今からだともう三ヶ月あまりしかないわけだ。惑星が地球に衝突あるいは接

触した場合ですら、地球上の生命は概ね死滅してしまうだろう。僅かに地中

深く潜り込むことができたほんのひとにぎりの人類だけが、かろうじて生き延

びることができるかもしれない。つまり、いまこの時点で地下避難所を用意で

きていない私たちは、もれなく死滅してしまうしかないということになる。

 そんな人民に、真実が伝えられたとしたら? 予測されるのはパニック!

ただただ無意味に生命を乞い、世の最後を儚み、自暴自棄になって争い

を始めてしまう、そんな無力な人類が生まれるだけなのだ。だから世界中

の高官たちは情報を隠蔽しているのだ。日本の政治家たちが未来の日本

に対して無気力なのも、実はそのせいかもしれない。

 私はいま、このメディアを使って、読者のみなさんにこの事実をはっきりと

告示しようと思う。惑星の名前は二ビル。11月も終盤になった今、空を見上

げればそこに……ん、誰? 誰だ、そこにいるのは? 私に、私に何を……

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                               了 


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