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第七十八話 極めて家庭的な会社。 [可笑譚]

 長期不況のさなか、能力主義に変化して出来るものが生き残り、さもなければ脱落

していくというクールな社会構造になってきたそうだが、世の中にはまだまだ家庭的

な会社があるという。

 「ただいまー。」

「あ、おとうさんお帰りなさい。」

「おお、お前らメシはまだなのか?」

「ええ、どうしましょうかねえって、みんなで言いながら待ってましたの。」

「そうか、じゃぁ、今日はなんか店屋物でも取るか。」

「わーい。わーい。」

「おとうさんは何がいい?」

「いや、みんなに合わせるぞ、ワシは。南は何がいい?」

「うーん、私はお蕎麦かおうどんでいいわ。」

「コウタは?」

「うん、僕はカツどんかな。」

「私もお蕎麦がいいわ。」

「そうか、じゃ、ワシは天丼にしよう。じいさんは?」

「あ、じいさんは、置くのお部屋でお話してるわ。あ、終ったみたい。」

おくの部屋から2人の中年男が出てきた。

「おお、ごくろうさんごくろうさん。みんな今日も遅いのかい?」

「あ、社長!お疲れ様です。」

「じゃぁ、ワシは帰るからな、みんなも早く帰るように。節電の世の中じゃからの。」

「はいっ社長、お疲れ様でした!」

と、じいさんがデスクに座りながら言った。

「おお、メシ取るのか?私にもお願いできるかな?」

「もちろんです、示威部長。何にします?」

「そうだな、寿司とうどんを取ってもらおうか。」

「わかりました!」

「ところで、今社長と話していたことなんだが・・・みんな聞いてくれるか?」

「はい!緒島課長も、奥係長も、そして南佐織、幸田隆、島田、山本、木田、みんな

今期も頑張ってくれたんだが、残念ながら、この低景気のために、結局数字を達成で

きなかった。なので、残念ながら、今期の成果配分は出せないんだよ。許してくれた

まえ。」

「しょ、しょんなぁー、じい部長。なんとかなりませんかねぇ。うちじゃ、臨時ボー

ナスを頼りに炊飯器を買い換えてしまったんですよぅ。」

「うちだって、車の買い替えを考えてたのにぃ!」

「僕だって・・・」

こうして、極めて家庭的な会社の残業時間は、またまた延びていくのだった。

                    了


タグ:残業 業績 会議
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