第七十七話 金属音。 [怪奇譚]
「カシャーン、カシャーン。」
風の強い夜。遠くの方で金属が風に揺られて音を出している。
「カシャーン、カシャーン。」
それは、どこかの家の鉄門扉が風で揺らされてな足している音なのか、あるいはどこ
かの学校の旗掲揚ポールの鎖が風に揺られているのか。昔、まだ小学生だった頃、同
じような音を聞いた覚えがある。その音は小さい子供に、何か不気味な怪物が切れた
鎖を足首につけたまま、牢を破って彷徨っている恐ろしい姿を想像させた。
「カシャーン、カシャーン。」
いつまでも鳴り止まない、夜風の中、宙に響く不気味な音。大人になった今は、そ
れが怪物の足首につながれた鎖の音などではないことはわかる。だが不気味に聞こえ
るのには変わりがない。
「カシャーン、カシャーン、カシャーン…。」
次第に近づいて来るような音。
「カシャーン、カシャーン、カシャーン、カシャーン…。」
心なしか、その音は大きく強くなっているような気がする。ははは、そんな。気のせ
いよ。風が吹く方向によって、風の強さによって、そんなふうに聞こえるだけさ。
「カシャーン、カシャーン、カシャーン。」
次第に大きく強くなったその音は、やがてうちの玄関の前あたりで音を止めた。
了
2011-04-12 23:57
読んだよ!オモロー(^o^)(0)
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