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第九百四十七話 半身世紀がやって来た! [可笑譚]

 君は面白いから適任だ、代表で参加してきてくれ。課長からそういわれて異業種交流会っていう物に参加することになった。こういう知らない人が集まる集会っていうのは苦手なのに、なにを間違って適任だと思われているんだろう。案内状にある地図をたよりに会場を訪れると、ちょうどはじまろうとしているところだった。会議室程度の広さの部屋に、二十人ほどの男女が集まっている。司会者が挨拶してビールで乾杯した後、自己紹介がはじまった。

 普通のサラリーマン風の若い男、大学院の研究者、大手企業のOLなど、ごく普通の自己紹介が続いた後、私の隣に座っていた外国人らしき若い男が立ち上がった。

「ぼくはパーキンソンといいます。芸能界代表です。こう見えて日本語しか話せません。アフリカ系のハーフなんです。だからみんなぼくに英語で話しかけるんですが、ぼく、英語は全然ダメなので困るんです」

 その後もパーキンソンは小学生の頃に野球サークルに入れられたこと、英会話教室に行ったこと、実家が和食店であることなど、延々とハーフであるがために起きたトラブルの話をして座った。彼の話にみんな大爆笑で、会の雰囲気がとても和やかになった。今世紀に入って、いやその前からかもしれないが、国際結婚がどんどん増えているために、こうしたハーフが増えている。いまや五十人にひとりはハーフという時代なんだそうだ。だけど、こんなに面白い自己紹介の後だなんて、なんて運の悪いことか。私は気おくれしながら立ち上がった。

「あのう、半部たけよです。実は私もハーフなんです……」

 会場はすっかり和んでいるので野次が飛んだ。

「まさか、ニューハーフじゃないだろうね?」

「まさか……違いますよぅ。でも、さっきの、パーキンソンさんですか? ハーフって言うけど、その言い方っておかしくないですか? 私、彼みたいのはハーフ&ハーフって呼ぶべきだと思います。と言うのは……」

 私はみんなに事情を話した。私は二十年前に実験段階でとん挫してしまった政府のプロジェクト「人類1/2計画」で生まれた子供なのだ。つまり、いずれ来る食糧難に備えて人間のサイズを小さくすることによって現存する食糧を実質二倍にしようという研究の具体化段階で行われたものなのだが、生まれてきた私たち1/2人間の赤ん坊を見て、不安になった人々が大反対して実験は中止になった。

「ね、私とはじめて会うと、みんな子供扱いします。でもれっきとした大人なんです。サイズはみんなの半分ですけど……だから私、ほんとうの意味でハーフなんです」

 みんなどう対応したものかと押し黙っている。するとひとりの男が立ち上がった。

「実は、ぼくもハーフです! ほら」

 言い終わってくるりと回ってみせると、彼は右半分しかなかった。その理由を言う前に別の人が立ち上がった。

「私、半分人間、半分魚……人魚ですもの」

「ぼくもだ……頭が魚だけど」

「俺なんて、下半身は馬だぜ」

 やれやれ、なんて時代になったんだ。

                                                  了


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