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第九百二十七話 失敗写真 [怪奇譚]

「なぁ、これちょっと、おかしいんじゃない?」

 ケータイで撮った写真を友人にメールで送ってやったら、後ろに変なものが写っているというメールが返ってきた。そんなこと全然気づかなかったのだけど、なにが映っているのかと思って送った写真を改めて見直した。

 たしかに友人の斜め後ろあたりに知らない人の姿が宙に浮かんだ形で写りこんでいた。またやってしまったらしい。よくあるんだな、こういうことが。つまり二重写しってやつ。昔、フィルムに写すカメラの場合、フィルムを巻くのを忘れてもう一度撮影してしまうとこういうことがよくあった。いまはデジタルなのになぜ? と思うけれども、デジタルはデジタルでデバッグというもの、つまり誤動作によって同じようなことが起きるんだと思う。詳しいことはわからないけれども、少なくともぼくの場合はよくあるんだ。

 二重露光以外にも、奇妙な写真はよく撮った。顔が奇妙にぶれてしまった手ぶれ写真、手や顔が途中で消えてしまっている露出不足写真、被写体の肩に手が乗っている遠近感錯視写真、背景に奇妙な顔が写りこんでいる写真……これは背景の木々や壁などの凹凸に影が落ちていて顔みたいに見えるものだ。写真に奇妙なものを見つけるたびに、友人や被写体になった人は驚いて騒ぐのだけれども、なぁに前部理由が分かっている。ぼくが撮るとなぜかそういう風に写ってしまうんだな、へたくそだから。

 それにしても昔に比べたら、写真の奇妙さが少しずつ過激になっているような気がしないでもない。昔は気がつくかどうかくらいのブレとか影だったのに、いまやこれ見よがしに顔全部が消えてしまってたり、切り張りしたように知らない人物が空中に浮いていたりするんだもの。撮影の腕がどんどん下手になっているとしか思えないのが辛い。それとも歳とともに目が悪くなり、手に震えが来ているからかなぁ? こないだなんて、凹凸のない白壁バックに自分撮りしたら、隣に変な首が写っていたし。どうもうまい具合に車のライトかなんかが反射して写りこんだんだろうな。どう見ても人の顔に見えちゃうから、あれ、友人に見せたらまた何とか写真だって大騒ぎになるんだろうな。去年、海で撮ったとき、友人一家の子供の背中に覆いかぶさるように写っていたあれはすごかったな。波しぶきがあんな風に見えるなんて、奇跡としか言えないと思う。いくらへたくそなぼくだって、あんな写真は二度とは撮れないな。しかしあの子はあの後事故に遭っちゃって、可哀そうなことをした。ま、それは写真とは関係ない話だけれども。

 それにしてもケータイで撮ろうがデジカメで撮ろうが、こんな写真ばかり撮ってしまうぼくはいったいどこまで撮影が下手なんだろうね。ほんとうに厭になってしまう。そういう撮影教室にでも行って勉強した方がいいのかもしれないな。でもまぁ、失敗写真ばかりでもないのだから、まぁいいか。人にはいいのだけをあげればいいのだからね。

                                        了


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