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第七百三十七話 ゲームかんせん [文学譚]

 仕事中にスマートフォンのアラームがピピっと鳴った。ん? メールの着信

か? と思ったら、アプリからのお知らせだった。「かぼちゃが届きました。確

認してください」

 ひと月前、友人から勧められてあるゲームをスマートホンにインストールした。

LIMEという通信アプリとジョイントするゲームアプリで、昔流行ったテトリスみた

いなゲームだ。画面の上の方からさまざまな野菜が落ちてくるのだが、カボチャ

頭のキャラを操ってカボチャを投げ、落ちてくる野菜を食い止めるという、ごく単

純なゲーム。暇つぶしにはもってこいだが、わたしはそれほど暇を持て余して

いない。だからインストールしたっきり、ほとんどこのゲームで遊んでいないの

だが。

 ゲームの特徴はもうひとつあって、手持ちのかぼちゃがなくなると、ゲーム終

了してしまうのだが、ネットを通じて友人からかぼちゃをもらうことができるのだ。

反対に、こちらがゲームを続けているとかぼちゃが増えていくので、それを友人

に送ったりする。要するに、単純なゲームをしながらかぼちゃの貸し借りをする

という仕組みになっているようなのだ。

 わたしにゲームを勧めた友人は、これやってかぼちゃを送ってね、と言ってい

たが、友人が増えれば増えるほどかぼちゃのやり取りが増えて、有利にゲーム

を楽しむことができるらしい。わたしはゲームをしていないのだが、時折その友

人からかぼちゃが送られてくる。するとわたしもお返しするためにゲームを立ち

上げてひとしきりゲームをした後、かぼちゃを送る。

 あるとき、設定画面を見て驚いた。いつの間にか友人のリストが増えている

のだ。このゲームは、LIMEという通信ソフトを基盤にしているために、スマート

ホンに保存されている電話帳の中身を照合し、オナジLIMEを使っている人を

自動的にピックアップして通信可能相手リストに並べてくれる。そのLIMEと連

携しているゲームなので、友人リストをそのまま持ってくるようだ。同じゲームを

立ち上げた人の電話番号を自動的にゲームの設定に読み込んで、さぁ、カボチ

ャを送りましょう! とささやいてくる。なんだこれは? 最初見たときには三人、

その次には五人、さらに今見たら十人に増えている。しかも、その住人のうち

四人は知らない人だ。わたしの電話帳には入っていないはず。なんで? よく

調べてみたら、づやらまたほかのSNSアプリでつながっている人をも見つけて

くるらしい。

 かくしていまやゲームを通じてつながっている見知らぬ人がどんどん増えよう

としている。そんな知らない人にかぼちゃを送っていいものか? でも知らない

人からかぼちゃが頻繁に送られてくる。毎日毎日、スマートホンはピッピっと鳴り

続けて、様々な人からかぼちゃが届いたと知らせてくれる。その度にわたしはゲ

ームを立ち上げて、知らない人からかぼちゃを受け取り、同時にかぼちゃを送り

返す。ゲームはこうやって人と人をカボチャでつなぎ合わせることに生きがいを

感じているようなのだ。カボチャ、かぼちゃ。わたしの日常に入り込んできたか

ぼちゃ。ふとなにかを連想する。これって・・・まるでウイルスみたい。人から人

へとどんどん広がっていく、ゲームウィルス。別にやりたくもない単純なゲーム

をしなければならないように仕向けられる、ゲームのウイルス。止めるためには、

このアプリを取り除かなくてはならないだろう。そうだ、これは感染だ。わたしは

知らないうちに、このかぼちゃゲームに感染していたのだ。

                                 了


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