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第百五十九話 ときめきモテ期をもう一度。 [恋愛譚]

 世の中にはどうやら”モテ期”というものがあるらしい。もちろん、これは異性に

モテる時期という意味で、若い世代が使う言葉なのだが、考えて見れば私にもこの

モテ期というものがあった。

 一度結婚に失敗し、その後は色気もなく過ごしてきたのだが、これでも結婚以前

には結構モテていたのだ。その当時はあまり気付いていなかったのだが。割合近視

眼的にしか物事を考えない癖が若い頃からあったので、男性が近づいて来ても、自

分にその気がない限りは、まったく相手にしていなかったのである。今考えればも

ったいない限りである。

 最高にモテていたのは、多分あのときだ。職場に三人、大学時代の同級生が二人、

そしてよく通っていたバーの常連客の二人。合わせて七人の男たちが何かにつけて

私のそばに居たがった。その頃の私にはすでに後に夫となる男性に思いを寄せてい

たので、七人の好意にまったく気がつかないでいたのだ。

 結局、七人の誰とも接近することもなく、だからなんのドラマも生まれないまま、

思いを寄せていた男性との交際が始まり、結婚、そして破局した。つまり、結果だ

けをみれば、近視眼的な私には男を見る目がなかったと言える。もちろん、結婚生

活がうまくいっている間はそれなりに幸せで、楽しい時期ではあったので、結婚そ

のものには何も後悔はしていないけれども、私にもう少し柔軟性があったならば、

あの七人の誰かとも同時に交際をし、離婚の後につなげる事が出来たかもしれない。

それ以前に、私が頑なでなければ、結婚に失敗する事もなかったかもしれない。

 こういう理由で、私の恋愛話は実につまらないもので、もっとドラマティックな

生き方をしてくればよかったなどと、四十を過ぎてから後悔しても後の祭りなのだ。

 離婚後の私は、一人暮らしを続けていたが、ある飲み屋で出会った岡田葉という

年下の女性と、ひょんなことから親しくなり、同居するようになった。女二人での

生活というものは、気兼ねがなく、何かと共通点も多く、下手な男女の同棲よりも

遥かに楽チンで楽しいものだ。だが、人間の営みのひとつである”性”というものか

らは疎遠になってしまうのが難点といえば難点である。

 飲食にしても、休日にしても、共に行動することがほとんどで、私たちは仲がい

いだけに周囲からは関与しにくい空気を作り出しているらしい。もちろん、女性同

士なので、他の女性たちは安心して近寄ってくるのだが、男性はというと、どうも

敷居を高くしているようだ。だから、私たちには異性と近しくなるチャンスがまっ

たくといっていいほどない。

 それでも、一人で買い物をしたり、バーに立ち寄ったりすることはある。そんな

時には、めぐり合わせがよければ、常連の男性客から話しかけられることもある。

「ポルシェに乗ったことある?」

「・・・ないですねー。」

「僕は若い頃からポルシェのオーナーになりたかったんだけど、最近ようやく・・・」

自慢話である。私は元来、”身持ちの固過ぎる”女だったので、あまりこういう話へ

の対応には慣れていないのだが、過去への後悔から、できるだけ楽しい時間を過ご

したいと思いで、出来る限りにっこりして彼の話に応じる。すると、調子に乗って

見知らぬ私にどんどん話しかけてくる。

「じゃぁ、今度一緒にドライブしない?あ、ワンちゃんも一緒でもいいよ。僕も飼

ってるから、平気だよ。」

「わぁ、本当ですか?ぜひぜひ、機会があったらお願いします。」

こういう軽口も、それはそれで楽しいと思う。相手によっては、もっと話を聞かせて

と願うことすらあるのだ。私も変われば変われるものだ。

 職場ではあまりにも私の過去を知りすぎている人たちばかりで、恋が芽生えるどこ

ろか昔の同僚であった元夫の話になったりするのだ。だが、昔の私を知らない協力会

社の人たちの中には、恋の種くらいはある。仕事の打ち上げで盛り上がって、二次会

ではデートっぽい雰囲気になることさえあるのだ。もちろん、今のところは残念なが

らそれ以上には発展していないが。

 その他にもネットを通じて知り合った男性を含めると、今の私には数人の男友達が

いる。今後何かに変化していくかどうかはわからないが、ふと考えるのである。もし

かして今、人生最後の”モテ期”に入ろうとしているのではないだろうか?と。だとす

れば、かつてのようにチャンスを逃すのは惜しいと思う。だって、人はいくつになっ

てもトキメキのある素敵なドラマの主役でありたいと願うのだから。

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※文中の出来事はすべてフィクションです。実在する人物や団体とは一切関係ありません。 

                               了

 

 


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