第九十五話 スカートひらり。 [可笑譚]
心地よい風が髪を乱す。ほつれた毛先が頬をくすぐって、それが決して不快
に感じない。それまで身を刺していた冷たい木枯らしとは打って変わって、春
先の風はぬるま湯のように気持ちいい。温くなった小川を泳ぐ小魚のように、
ほんのりあたたかい通りをふんわりと歩く。ふんわりとしているのは、私のス
カート。ひらひらした柔らかいシフォン生地のスカートが足元にまつわりつく
感触が私は好き。スカートひらひら、ほら、通り過ぎる人にもそれはわかるみ
たい。みーんな小魚みたいに嬉しそうに、私の姿を愛でながら通り過ぎていく。
あんまり心地いいので私は歩きは、まるでダンスのようなステップを刻み始
める。ずんたったずんたった、たらりたらり、ずずんたたった。私が踊ると人
々も…人々も?通り過ぎる人々は、笑って…いる?そんなに楽しさが伝わった
のかしら?ずんたった、ずんたった、ひらぁりひらり、ずんたった…。
私の足元、シフォンスカート。想像以上に風通しがいい。そりゃぁ、シフォ
ンだもの。だけど、え?え?ええっ!?このスカート、花柄のはずなのにぃ、
はずなのにぃ、無地だ。しかも透けすぎ!あらぁ~!
私、スカートはき忘れ。あんまり気持ちがいいので、ペチコートをはいて、
その上にスカートを重ねるの、忘れてたみたい。春先は、春先は、気持ちよ過
ぎて頭の中までスカスカなのね!
了
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出くわしたい!
by (。・_・。)2k (2011-05-03 15:37)