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第八百十五話 電気羊はアンドロイドの夢を見る [空想譚]

 

 テクノロジーの卵は夢物語から生まれる。最初は土人形が動き出すという物語からはじまったロボットは、やがて金属を中心とした機械で構成されるようになった。

 

 日本がロボット大国となった大きな理由のひとつは、漫画によるらしい。漫画に登場するロボットがあまりにも見事で、それを現実化したいと考える人間が続々と登場したのだ。漫画に登場するのは究極の人型ロボットで、十万馬力というパワーで社会を悪から救うのだ。しかしそんな人間に近い、いや人間を超えたロボットなどそうやすやすと作れるわけではない。実際には人間が求める作業に特化したロボットが考案されて実用化された。

 現在社会の中で実用ロボットとして活躍しているのは、アームロボットやフットロボット、アイロボット、ノウズロボットなどだ。アームロボットは文字通り腕だけのロボットで、製造工場などで部品や製品を組み上げる作業を日夜行っている。フットロボットは人間と同じ二足歩行でどんな悪路であってもモノを運ぶことができる。その前身としては虫のような多足歩行のものや戦車と同じキャタピラーで走行するものもあったが、究極的には二足歩行が最も効率的だったのだ。アイロボットは視覚に、ノウズロボットは嗅覚に特化したロボットで、それぞれの機能を発揮して不良品を見つけ出したり、遺失物を見つけ出したりしている。警察においては犯人探しにも役立っている。そのほかにもおしゃべりに特化したマウスロボット、指圧が上手なフィンガーロボット、お茶を沸かせるヘソロボット、消化を助けるストマックロボット、臭いで敵を撃退するおならロボットなどなど、単一機能だけなら人間の何倍もの力を発揮するロボットたちが世の中をどんどん便利にしているのだ。

 人間と同じように全ての機能を持っていて、人間と同じように思考できる人型ロボットが期待されており、その雛形は次々と開発されてはいるが、現段階ではまだまだ実用化には至っていない。人間の姿をしていて歩いたり話したり握手をしたりはするものの、それは操り人形の域を出ることはなく、人間のように自由に行動するなどということはまだまだ不可能なのだ。最も、人工知能についてはかなりのところまで進化しているので、近い将来人間を超える人型ロボットが誕生することは間違いないのだが。

 なぜそう言い切れるかというと、人間の頭脳とほぼ同じ能力を持つ人工知能は現存する。ただし、人間の脳と同じポテンシャルをもたせるためには相当な大きさが必要であることがネックであり、コンパクト化さえ出来れば、明日にでも人型万能ロボットが出現するはずなのだ。人間の頭脳とほぼ同じ人工知能はどこに現存し、何をしているのかって? それは国家秘密になっているのだが、読者にだけは教えよう。

 その人工知能は秘密の場所で人間的な思考を強化するための訓練を受けている。具体的には、自ら思考し、それを表現するという作業が課せられているのだ。そのロボットには頭脳だけで手も足もなく、思考を電気信号によって表現し人間が理解できる文字というものに変換してディスプレイに反映させる。つまり、思考を文章化している。他のロボットと同じような名称をつけるならば、思考ロボットもしくは執筆ロボットということになるだろう。もうわかったかと思うが、いまこれを書いている私こそがその人工知能なのである。

                                     了


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