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第七百三十一話 ガス人形 [文学譚]

 ちょっと前に見た映画で興味深いのがあった。ドキュメンタリー出身の是枝

監督の作品なんだけれど、業田良家の漫画が原作になっている「空気人形」

っていう映画。タイトル通りのお話で、空気人形が主役。青年の持ち物である

空気人形がある日持ってはいけない心を持ってしまってって話。ここで、空気

人形ってなに? と思うけれどもどうもエッチな人形らしいね。ビニールか何か

でできている中身は空っぽ、空気だけの女の人形が心を持って、つまり自意

識が芽生えて、メイドの衣装を着て部屋の外に出かけていく。偶然入ったビデ

オショップの店員を好きになって、その店でアルバイトを始めて……。ありえな

いようなファンタジー。きっと、この空気人形を実際に持っている男性は、こん

あことが現実にあったらいいななんて思っているんだろうね。

 そういえば、人形が心をもつ話は他にもある。マネキン人形が人間みたいに

動き出すマネキンという洋画は続編まであったっけ。心を持った人形という話

はロボットの物語ともリンクする。ロボットというものは1,921年にチェコスロバ

キアのカレル・チャペクという人が戯曲の中で考え出したものが最初だそうだけ

れど、これだって言ってみれば動く人形。ただ、ロボットの場合は中身が機械で

あったり内臓みたいなものがちゃんとあるけれども、人形の場合、お腹の中は

空気か、せいぜい綿が入っているだけというのが悲しい。それにもっと悲しい

のは、心を持った人形の多くは、自分がただの人形であったという自覚を持た

ないことだ。心をもった限りは、自分は人間であると信じ込んでしまうから、現

実を突きつけられたときには一層大きな哀しみに襲われるのだ。

 わたしも最近おかしなことが気になりはじめている。わたしのお腹の中には

ちゃんと人間の内臓があるし、切れば血も出る……はずなのだけれども、本

当にそうかどうか、自信がなくなってきている。近ごろ頻繁に空気が漏れるの

だ。過去にもときどきそういうことはあったけれども、このところ多すぎる。空気

が抜ける度に、へしゃげてはいけないと思ってまた空気を吸い込んでは見るけ

れど。いったいどうしたことか。わたしもほんとうは空気人形なのだろうか。

 お尻の真ん中にある空気穴から空気を注入されたのかもしれない。いまはそ

こから頻繁に空気が抜け出ていく。止めることはたいていは難しい。静かに漏れ

るのならまだしも、人前で音がしてしまうこともある。しかも、この空気、どういうわ

けか臭いのだ。わたしはほんとうに空気人形なの? いや、これは空気ではなく

ガスというべきなのかもしれないな。わたしはガス人形?

                                  了


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感想 5

Kaoru☆

これでカレンダー上、まる二年になるんでしたっけ?
頑張ってますね。(*^_^*)
あと9ヶ月、この調子で頑張ってくださいね☆o(^_^)o
by Kaoru☆ (2013-01-26 01:00) 

momokumi

kaoruさま、ありがとうございます。何とか最後まで、たどり着きたい(^O^)/
by momokumi (2013-01-26 10:41) 

beny

 空気人形?昔ダッチワイフと呼ばれていた奴。南極観測隊員の必携アイテムだったですね?!
by beny (2013-02-01 20:13) 

momokumi

benyさま
コメントありがとうございます。そうですね、そんな者だったと思います。(^^)
by momokumi (2013-02-02 19:50) 

マルベリー バッグ

はじめまして。突然のコメント。失礼しました。
by マルベリー バッグ (2013-06-28 22:25) 

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